「信っじらんねぇ!ナツのバカ!!もうお前なんかしらねー!!!」






そう言って、あわてふためきながら必死に弁解するナツの頬を思い切り平手打ちしてやったのが三日前くらい。
ギルドの中央で、みんなが見てる前での公開処刑だった。





そんなことを思い返しながら、俺は今日もギルドのカウンターに座り、ミラちゃんから貰った酒をイライラしながら一気に飲み干す。

いつになく荒れてる様子の俺を見て、隣に座るカナは苦笑しながら言った。


「グレイ、まだナツと仲直りしてないのかい?」

「知るかよ、あんなバカ。絶交だっつーの」

「絶交って…子供じゃないんだから」

「っ、今回のはアイツが全部悪いんだ!俺は謝んねぇからな!!」



ムッとして言い返すも、カナはやはりさっきと変わらず「はいはい」と言った感じで苦笑しながら、一口酒をあおった。
そうして、困ったように笑いながら呟く。



「…まぁ、たしかに今回のはナツが悪いかもねぇ」





そうだ。ナツが悪い。
だってアイツがあんなこと言うから。






あの日、依頼を終えた俺は急いでギルドに帰った。

短いクエストのはずだったのに、だいぶ長引かせてしまったから。
ナツを待たせてしまって何となく申し訳ない気持ちと、……い、一応恋人であるナツに会いたかった気持ちが俺をつき動かした。

なんというか、家に子犬を置いてきてしまったような、そんな感じ(まぁ実際待たせてるのは変態大型犬なわけだが)。


とにかく俺は急いでギルドへ行き、手早くミラちゃんに報告書を渡してアイツの姿を探した。

そして見つけた、ギルドの中央のテーブルに座りながら爆笑しているナツ。
俺は呆れながらも、ナツに駆け寄り「ただいま」と言おうとした。



が、それはナツの声によって遮られる。






「いやー、本当アイツってエロいんだよ!ヤってるときの喘ぎ声とかヤバいし、もうなんかめちゃくちゃにしてやりたくなる」

「マジかよ!」

「どんな感じで声出すんだ?」

「『ナツぅ、イっちゃう』とか」

「「えぇー、グレイが!?」」

「でも確かにそれはヤバいかもな…」

「へへっ、だろ?超可愛いんだ♪」






そう言いながらマカオやワカバに得意げに語り笑うナツを見て…俺の中の怒りは炎のように燃え上がり、ぎゅっと拳を握りしめた。


なんで、なんで。
どうしてそんなこと他人に話してんだよ。

…なんでそんな恥ずかしいこと、平気で皆に話すんだよ…っ!



俺は自分の頬が真っ赤になり、視界が滲んでいくのを自覚した。


ズカズカとナツに駆け寄り、後ろからマフラーを引っつかんで立ち上がらせる。ナツはギョッとしたように目を見開き、俺を見るなり慌てて口を開いた。




「お、おかえり…グレイ」

「…ずいぶん楽しそうだったじゃねぇか。何話してたんだよ」

「え、え?いや…っ、」

「ッ…人の恥ずかしい話言い触らすの、そんなに楽しいかよ!」



俺はたまらなくなって、ナツを怒鳴った。涙がポロポロこぼれ落ちる。



「ご、誤解だグレイ!今のは、ほら…」

「信っじらんねぇ!ナツのバカ!!もうお前なんかしらねー!!!」



バシン、とナツの頬に平手打ちをお見舞い。テーブルに派手に倒れ込んだナツやうろたえるマカオ達を無視して、俺は涙を拭いながらギルドを立ち去った。






そんな事件があってから、俺はもちろんナツと口を聞いていない。
ルーシィやミラちゃんは一部始終を見ていたから、もう許してあげたら?なんて言ってくるけど、冗談じゃない。俺は本気だ。



カナによって並々と注がれた酒をまた一気に飲み干し、カウンターに突っ伏す。


「…グレイ、その辺にしないと酔うわよ?アンタ強くないんだから」

「…うるせぇ…もういいんだよ…」



あぁ、酒のせいだろうか。
目頭が熱くなって、俺はゴシゴシと袖口で目をこする。



「…ナツのバカ。バーカ、ばぁか…っ」



呟いた声は、自分でもわかるほどに、ひどく弱々しい音だった。



「ひっく…変態だし、しつこいし、デリカシーないし…普通、あんなこと言うかよ…っ」

「そうだねぇ」

「だからモテねぇんだよ…っ、アイツ…」

「でもグレイは好きなんだろ?」

「………っ、」


カナの言葉に咄嗟に詰まってしまう自分が情けない。


「ナツはたしかにあんなこと言ってたけど、それはグレイが好きだからだよ。じゃなきゃあそこまできわどい話、他人にしないって」

「……」

「愛されてんだよ、アンタ」



カナがいつになく優しい声色でそう言った時、不意に首のあたりがふわりと温もりに包まれる。


見れば、それは紛れもなく"アイツ"のマフラー。


ビックリして顔を上げると…そこには、ムカついてしょうがないアイツの、情けない面があった。




「っ…!!」

「グレイ…」



ナツは弱々しい声で俺の名前を呼ぶと、突然ガバッと俺に抱き着いてきた。
一瞬ビビったけど、俺はすぐに暴れてナツの腕から逃れようとした。



「ばっ、やめろよ!離せっ…てめぇなんざ知らねぇって言ってんだろ!!」

「グレイ、ごめん…本当にごめん!」

「っ嫌だ!絶対許さねぇ…っ!」



ジタバタと必死に暴れてみるが、悲しいかな、ナツの腕力と体格に敵うはずなく抜け出すことはできなかった。



「っ…くそ」

「グレイ、俺が悪かった。…まさかあそこまで泣かれると思わなくて」

「だからって、んなデリカシーないこと言うかよっ…!」

「…ごめん」

「だいたい、なんであんなことッ…、」

「……すき、だから」

「……え?」

「お前が好きすぎて、大好きで大好きでしょうがねぇから…誰かに自慢したくなっちまうんだ」




ナツのそんな言葉を聞いたら、なんだか胸がきゅぅっと締め付けられて、一体自分が何に怒ってるんだかもわからなくて、なんかもうわけわかんなくてぐちゃぐちゃで…
ただただ、目の前の体に縋るように抱き着いた。




「…ムカつく」

「ごめんって。もう許してくれよ」

「やだっ…お前なんか、―――んんぅっ!?んっ…ふ、ぁ…」




突然体を引き離されたかと思えば、ナツに唇を塞がれてしまった。
舌が俺の咥内へと滑り込み、歯列や上顎を舐め回される。
そのまま舌を噛み切ってやろうか、などと一瞬考えたが、どういうわけか俺はナツにされるがまま甘い甘い唇に蹂躙された。




「んっ……、ぷはっ…」

「へへっ、仲直りのちゅーな」

「…ばぁか」

「あ、つーかお前酒くさい。飲んだ?」

「うっせー。てめぇのせいだバカナツ」

「はいはい…どうもすみませんでした」

「…反省してんのかよ………、」

「…?グレイ、グレイー?」




そこからの記憶は全然覚えてなくて、ただ体がふわふわする感覚と…すごくすごく暖かい温もりに包まれてるような、そんな心地がした。


ムカつくし、本当ありえないバカな彼氏だけど。



今回ばかりは譲歩して、仲直りのちゅーで許してやる。





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「ナツ、もうグレイのこと泣かすなよ」

「…悪ィなカナ。コイツの面倒見てくれて」

「いいから早く帰んな。隣でイチャイチャされたら酒がまずくなるっつーの」

「しゃーねぇなぁ。家に連れて帰ってやっか」

「ナツ、アンタ酔っ払ってる子に手出しするんじゃないわよ?また怒られるからねぇ」

「あ?んなの無理に決まってんだろ。見てみろ、この幸せそうな寝顔とミスマッチな壮絶な色気…あーやべ、ぐちゃぐちゃにして泣かせまくるしかねーな」

「お前本気で反省してんのか?」





END♪





柚悠様ーっ(^^)
本当クオリティ低すぎてごめんなさい(T-T)

こんなですが捧げます♪


柚悠様のみお持ち帰りOKです!



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みるくさまー!素敵なお話ありがとうございました!


お持ち帰り厳禁です!
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