「ねぇグレイ、好きだよ。」
何十、何百とも聞かされた言葉に一々返事をしてやる程俺は優しくない。なぜなら信用できないからだ。ポンポン甘い言葉を囁くコイツは言わばモテ男で、調子に乗って俺で遊んでるだけだ。そのうち俺を構うのにも飽きてまた別の奴の所に行くだろう。相手にしたら時間の無駄である事に告白を受けて約1ヶ月。漸く気づいた俺は無視を決め込む。
「ねぇ聞いてる?グレイ。」
「うるせぇ。」
けれど流石にうざったくて、仕方なしに冷たい言葉で返事を返してやるとしょぼくれるロキ。コイツ、顔だけはいいからその寂しげな表情に言い過ぎたかと後悔しかけ、慌てて首を振った。騙されるな、俺。
「グレイ冷たいよ…。」
無視をしても尚ブツブツと不満を漏らすロキに溜め息を吐きながら読みかけの本を閉じた。するとロキがあからさまに嬉しそうな顔をして俺に抱きついてくる。犬かコイツは。
爽やかな見た目とは裏腹の案外甘えたな性格とのギャップに、世の女共はコイツに魅了されるんだろう。
「今日は殊更しつこい。何だよ。」
「僕はグレイが好きだ。」
「それは毎日聞いてる。」
このバカはところかまわず愛の告白をしてくるものだから困る。最初はそれなりに殴ったりして抗ったが今はもう面倒くさい。周りも「ロキはグレイが大好きだな。」とか「グレイ、もうロキと籍入れたらどうだ。」なんて。俺らは男だっての。
それにコイツが俺に構うのはからかいか何かだろう。本当の事だし、俺だってそっちの方が清々するはずなのに、何故かそう思う度に胸が痛んだ。
「グレイが好きだから僕はグレイが欲しい。グレイとえっちなことがしたい。」
「バカ。男に欲情すんな。女でも見ておっ立ててろ。」
「ムリ。だって僕のオカズはグレイだけだからさ。」
「な…っ」
嫌味で言ったセリフをとんでもない言葉で返され、思わずカッ、と頬に熱が走った。というかそれに対して嫌悪を抱かない俺は聖人か?
悶々とし、顔の熱を誤魔化そうとしていれば、隅にいたはずのロキの顔がいつの間にか近くにあった。
「…近ぇよ。」
「グレイ。僕ね、実は童貞なんだ。」
「はっ?マジかよ?」
「ホントだよ。というかわざとだけどね。」
ロキのカミングアウトに唖然とする。コイツは中身はド変態なのに顔はめちゃくちゃいいせいで群がる女があとを絶たない。てっきり済みかと思っていたら未使用だと?
「僕の最初はグレイって決めてたからね。」
背中を冷たい汗が流れる。逃げたくてもロキの手にがっちりと捕まれていて逃げようがない。
何だよ、それ。それじゃまるで…、俺の為にとっておいたみたいじゃねぇか。
「僕の最初をあげるから代わりにグレイのはじめてを頂戴。」
獣みたいな目をしたロキが、俺をシーツに押し倒す。
天井が遠のきロキの顔が更に近まった。
バクバクとうるさい心臓、顔に集まる熱。翻弄されてただ視線を彷徨わせていれば、ロキはくすりと笑って俺の頬に口付けた。
「なっ、ロキ…!」
「グレイ、いい加減素直に認めなよ。」
「え…?」
「キミは、僕が好き。」
ロキの言葉に、うるさかった心臓がより大きく蠢いた。じわじわ熱が脳を浸食して指先が冷たくなる。それはまるで、子供の頃に嘘がバレた時のような、そんな感じ。
俺が、ロキを好き…?
震える俺をロキが抱きしめた。暖かな体温が俺を包み込み、ロキの香水がふんわりと鼻孔をくすぐる。
「な、に、言って…。」
「じゃあ聞くけど。今、嫌?」
問いかけられた内容に、いよいよ俺は泣いてしまいそうだった。男に抱きしめられるなんて嫌悪しかないはずなのに、嫌じゃない。いつだって、ロキに抱きつかれた時も罵倒はしても突っぱねたりしなかった。
どうしよう、これじゃ本当に…。
「自分に素直になって。」
「っ、わかんねえよ…」
「じゃあ質問変える。嫌なら殴って。」
ロキの言葉に反応する前に塞がれた唇。
やっぱり、拒む事はできなかった。ロキのキスに瞳を綴じて応える。
すとん、心のなかで何かが落ちる音がした。
2012 0802
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