「嫌だ」
眉間にシワが寄るのが分かった。しかしそれは普段するのとは比べものにならないぐらいに歪んでいて、しかも視線は射殺出来るんじゃないかと思うほどに鋭くする。
「一回だけ…」
「一度だろうが二度だろうが嫌なものは嫌だ」
俺の上に跨がったロキを睨む。そして視線を少しずらしてロキの手の中にあるそれにも睨みを効かせた。彼の手には丸い飴玉の入った小瓶。外に出た際にファンに貰ったものらしい。非常に不愉快だ。
知らない奴からホイホイ貰ってくるロキは勿論、コイツに色目を使う女たちも。
「おいしいよ。ほら」
ひとつ取り出した飴玉が唇をなぞって咥内に侵入してきた。実食済みかよ、と罵倒を吐きながら甘く広がるそれを思い切り噛み砕く。
「駄目、噛んだら勿体無い」
「うるさい、どうしようが俺の勝手だ」
まだ残る甘みのままロキと唇を重ねる。飴の甘さとは違う甘さが脳にまで浸透してじわりと痺れた。
「ん、…ん」
貪り貪られるような口付けに夢中になっていると裾が割られてロキの長い指が悪戯を始めた。
「ん、は、ぁっ…あ」
後孔を行き来する指に神経がざわめく。いつになく性急なロキに俺も先をねだった。
「ろ、き…」
ずるり、と去っていく指に肉が物欲しげに収縮する。次にやってくるだろうロキの熱を思い出して頬が熱くなった。
だけどそこにやってきたのは、
「ぁ、ひ…っ」
コロリと侵入してきたかと思えばもうひとつ、もうひとつ。やってきた侵入者はロキじゃない。
「こっちは噛み砕かないで食べてる。おりこうさん。」
中にやってきたみっつの侵略者。こいつ、なんてとこにいれやがったんだ。よじる度に意図と反して蠢く飴玉。飴同士がこすれて内壁を刺激する。
「ひっ…、あっ、あぁっ、あぅ!」
予期できない刺激に体が翻弄される。更にロキの指まで入り込んできて飴をかき回すようにぐりぐりと弄られて、触られていない欲望がだらだらと涎を垂らす。
「うぁぁっ!!ばっ…か!!や…めろ、よぉ…っ!!ぁっ、あほぉ…!!」
「気持ちいい?グレイ」
めちゃくちゃ気持ちいいよ。ってか良過ぎて何が何だか分からない。
「僕も混ぜて」
抜かれた指の後にもうふたつ追加されてロキの熱が押し込められた。
「――――あッ!!」
一瞬で目の前がスパーク。もうわけが分からないうちに達っしていたみたいだ。かろうじて身につけていたシャツがぐっしょりと濡れている。
「グレイ、これ…凄い気持ちいい」
「ぁ…、阿呆…、くいもん、…粗末に、すん、な…」
とりあえずコトが済んだら徹底的にお仕置きと、この飴玉は没収。胸くそ悪いから捨ててやる。
仕返しにと食いちぎるように締め付けたやったはずなのに、逆に火がついたらしく更にひどい目にあわされた。
翌日、通り過ぎさまに飴をくわえたナツを目にしたとき無性に腹が立ったから殴ってやった。
2012 0801
俺を玩具にするなよ
飴玉のつぶやき。