まぶたを閉じているのに目の前が真っ白で、私は眠たくて仕方がない目をうっすらと開けた。まだ全然寝足りないのにもう朝になってしまったらしい。今日は休みだから好きなだけ寝ようと時計のアラームはすべて止めてたのに、体に染み付いた習慣でいつもの時間に起きてしまったようだ。ぼんやりと携帯の時間を確認して、携帯を手に持ったまま目を閉じて寝返りを打つ。隣で寝ているはずの徹がいない。

「あ、やっぱり起きた」
「やだ…まだ寝る…」

寝室の扉は開けたままだったのか扉の開く音なんかしなかった。それでも部屋にいなかった徹の声がして、徹がベッドに上がったのかベッドが軋んだ。徹が張り付いた髪を取るためか頬をなでる。くすぐったいけれど眠気には勝てず、私はうっすらとまた目を開けてから閉じた。徹はお風呂上がりなのか髪の毛が濡れていたように思う。気にするとさっき触れてきた手は蒸気を帯びていたように感じた。

「えー、名前起きないと俺超ヒマじゃん」
「…しらないよぉ」
「知らなくないでしょ。起きてよ」

ふてくされたような徹の声が上から降ってきてどんどん眠気が強くなった。まどろむ頭では徹の声に睡眠効果があるんじゃないかと考えてしまうくらいで、ぺちぺちと頬を優しく叩く徹の温かい手から逃げるために寝返りを打つ。ひたすら眠いのだ。だから肩を揺らすのはやめて欲しくて、私はくるまっていた毛布の下から手を出して徹をつかんで引き寄せた。乾かしていない徹の濡れた髪が私の首筋を濡らす。少しだけ目が冴えた。

「ちょっと、どうしたの名前」
「ヒマなら…徹もねれば…?」
「いやいやいや。俺風呂上がりで髪乾かしてないから」
「…なら、乾かして来て」
「そしたら名前寝ちゃうじゃん!」

耳元で徹が大きな声を出したためますます目が冴えてきてしまい、まだはっきりと覚醒したわけではないけれど目を開け徹を離す。体を離した徹と至近距離で目が合ったのでうるさいと文句を言うと、申し訳なさげな表情をした徹が謝まった。徹は私の顔の両側に腕をつき体を支えているのでまるで押し倒されているみたいだ。だからなんだと言う話で、徹に押し倒されるのはそんなに珍しいことでもない。

「久しぶりにデートしようよ」
「…眠い」
「デート!」
「うるさい…近いしうるさい」
「なんで二回言ったの…」

ガッカリしたように徹は私の上から体を起こしてベッドに座り直した。またベッドの軋む音がして、私はいつの間にか離していた携帯を探り当てて時間を確認する。さっき確認した時よりも20分が経っており、目も冴えてしまったのでデートもいいかもしれない。だけどベッドの中は心地よくて、起きるに起きれなさそうだ。だからデートはまた今度がいい。どうせならベッドでゴロゴロしていたい。

「…徹が髪の毛乾かしてきたら考える」
「寝ない?」
「うん。目ぇ冴えちゃったから、もう起きる」
「…わかった。ちゃんと起きてね。また寝たら起こすから」
「もー、徹うるさい。さっさと乾かして来て」

少しだけ体を起こして顔を覗き込んできていた徹の背中を押した。いたずらっ子のように笑った徹は絶対起きててね、なんてしつこく言葉を残してから部屋から出て行く。起きるって言ったのだから信じてくれてもいいじゃないか。まだ心地いいベッドから出られそうにないから、ゴロゴロするつもりだけど。



夢現にさまよう

writer 詞

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