長編 | ナノ


魚を拾ってしまった。
拾ってしまった、なんていうのは言い間違いだとか、わたしの日本語が不自由だとか、そういうわけでは決してない。わたしは魚釣りをしていたわけではなく、ふつうに通学路を歩いていただけであって、たまたま排水溝につまっているところを運悪く発見してしまったのだ。ただその魚には決定的に普通の魚と違うところがあって、なんと人間の身体がついていてじたじたと長い足をふってもがいていた。
一瞬、白昼夢でもみているのかと我が目を疑った。ベタにほっぺをつねってみる。痛い。事実は小説より奇なりとはよく言ったものだ。
そのまま通り過ぎてもよかったが、いたいけな生き物を見捨てるのはあまりに人でなしな気がして、あの、大丈夫ですか、と声をかけてひっぱってあげた。(余談だがかつてこれほどひっぱったことはない)
無事排水溝からの帰還を果たした彼は、なんと人間の顔をしていた。(おまけに金髪碧眼のものすごいイケメン)

「ありがとう、助かった。ああ、いやちがう。つまったんじゃない。ちょっと隙間を楽しんでいただけだ」




喋っ、た…!





おさかなと排水溝
(ていうか詰まってたじゃん!)
20100316
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