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鬼男君を返してください、まるで殺人犯でも見るかのような目で睨まれ、内心心外だと思いつつ笑顔を造った。

「返して、って?」
「とぼけないでください!鬼男君を消したの、大王様でしょう!」

黒目がちの瞳はぎらぎらと怒りに燃えていた。やれやれ、大分冷静さを失っているようだ。

「確かに彼を消したのは私だけど、それは彼にとって良いことだったんだよ」
「詭弁です」
「何故そう言える?だって彼等鬼は君達人間の罪なんだから」
「、それでも…!鬼男君は優しかったもの!消すなんて…!」
「嗚呼―――益々良かったね」

え、と彼女の動きが止まった。だってそうじゃアないか、優しいだって?笑わせる。そんな鬼、鬼として失格だ。

「出来損ないだったんだよ、彼は」
「…非道い」

絞りだすように、やっとのことで彼女はそれだけ呟いた。俯いた円らな瞳には涙が溜まっていて、それを見て喉に嫌なものが込み上げてくるのを感じた。(嗚呼、不快だ)

「残念だね。君はもっと賢いかと思っていたよ」

だのに君はあんなつまらない鬼一匹のために涙を流すんだね。非道い裏切りだ、全く。
嗚呼全く以て残念だ。俺は結構君を気に入っていたのだがね。

「どうやら俺の思い違いだったみたいだ。サヨナラ」





(飛び散った紅は期待したより美しい鮮やかさで、満足した)
20100617
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