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ダイゴから電話があったのは夜も更けてのこと、珍しいこともあるものだ、今日はなまえちゃんと会う日だと嬉しそうにしていたのに。(私に電話なんかしてる場合じゃないだろう)

「もしもしダイゴ?」
「…ミクリ」
「どうした?なまえちゃんは帰ったのか?」
「…そのことなんだが」

すまないが、家まで来てくれないか。低く呻くようにダイゴが言い、何かあったのだろうと察した私は分かったと短く返事して電話を切るなりダイゴの家に向かった。豪華な玄関を開けた私の目に飛び込んできたのは想像もしなかった光景だった。

「…なまえがね、悪いんだ」

茫然と立ち尽くす私を尻目にダイゴは虚ろに呟いた。青灰色の瞳は焦点が定まっておらず、空中を眺めていた。

「なまえが、もう会えないなんて言うから」
「…………」
「好きな人ができた…?あり得ないよ。だって僕以上の男なんかいない」

だろう?、ダイゴは壊れた人形のように床に転がるなまえちゃんに尋ねたが返事はない。真っ白い首筋には生々しく赤い線が残っており、二人の間に何があったか悟った。

「…ダイゴ」
「なあミクリ、どうしてかな、なまえが起きないんだ」
「ダイゴ、」
「おかしいなあ。さっきから呼んでるのに」
「ダイゴ」
「…ミクリ、僕はね」

本当になまえを愛していたんだ。彼の悲痛な呻きに私は何も言うことができずに黙って美しい女性の姿をしたがらくたに寄り添う背中を見つめていた。本当にね、愛していたんだよ。彼が告げた真実こそこの悲劇の始まりだったのだろう。





20100523
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