わたし、先輩のこと嫌いです 狼先輩は一瞬ぽかんと口を開け、それからちょっと苦笑した。 「なんだ急に。俺なんかしたか?」 「いえなにも」 わっかんねえ奴だなあ、なんて呑気に笑わないで。大嫌いなのよその笑顔。(だって心臓に悪い) 「じゃあどこが嫌いか言ってみろよ、怒んねえから」 「そうですね。まず黒服さんたちが鬱陶しいです、ぞろぞろと」 「それって俺のせいか?」 「ええ先輩のせいです。あとそのファーが暑苦しいです」 「暑苦しいってことはねえだろ…」 「そのくせ胸元開けすぎです。露出狂ですか」 「いやそこまでじゃねえよ」 「とにかく引くくらいのカリスマ性とか、ありえない程部下想いなところとか、心臓がひっくり返りそうな笑顔とか、ぜんぶぜんぶ大嫌いなんです先輩なんか」 「はあ要するに、」 結局おまえは俺のことがだいすきってこった、 先輩の言葉が脳に届くか届かないかのうちに顔がかーっと熱くなった。(な、な、な、) 「先輩は馬鹿なんですか。わたしの話、ちゃんと聞いてました?」 「聞いてたから言ってんだろうがよ」 「わかりました、先輩ナルシストですね。自惚れるのもいい加減にしてください」 「だって俺の笑顔で心臓がひっくり返るんだろ?」 痺れる告白だなァ、にやにやしながら先輩が近づいてくる。(だからその笑いやめてったら!) 素直になれよ、なんてうるさいうるさい認めるものかナルシストめ。 惚れたら負けよ、負け犬よ 20100304 noise |