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ああ、とてもかわいいよよく似合う、
にっこり笑って彼は言ってくれる。わたしも可愛らしいピンクの唇で笑い返す。
彼がプレゼントしてくれたそれはわたしの唇の上でぴかぴかと誇らしげに新品の輝きを放っていた。
なまえはかわいいね、そう言って彼はたくさんたくさんプレゼントをくれる。それはたとえばかわいらしいハート型をした首飾りだったり、ピンク色のフリルのついたケーキみたいなお洋服だったり、首にリボンを巻いたつぶらな瞳のテディベアだったり。
わあ、ありがとう。
わたしは彼のプレゼントに手を叩いて喜ぶ。
よかった気に入ってくれたんだね。なまえの趣味は女の子らしくてとてもかわいいね。
うん、とっても素敵なプレゼント!
ほんとはハートよりもクロスの首飾りがほしいだとか、ピンクよりも黒いお洋服のほうが好きだとか、ぬいぐるみなんかいらないだとか、そんなことは間違っても口に出したりしない。
僕はなまえがだいすきだよ、彼は優しく囁いてくれる、わたしはそれだけで満足なのだ。



最近彼がプレゼントをしてくれなくなった。
ねえダイゴ、明日は久しぶりにショッピングでも行かない?、
そう誘うわたしの唇には彼がプレゼントしてくれた甘ったるいピンクが引かれ、体には彼がすきな真っ白いフリルがまとわりついている。
ああ―――、
いつもなら、いいね、そうしようか、というはずの彼の返事はどうも気がない。
なあにダイゴ、なにか用事でもあるの、
用事っていうかさ、もうそろそろ飽きたんだ、
なんのはなし、
つまり簡単に言えばさようならってことさ、
じゃあね、短い挨拶をして彼は行ってしまった。
わたしは滑稽なフリルばかりのワンピースに身を包み、毒々しいピンク色の芋虫を唇にくっつけて立ち尽くしている。



街で彼を見かけた。隣にはこれでもか、というくらいフリルがついたクリーム色のワンピースを着た女の子。
頭の両側にはクロワッサンと馬鹿みたいに大きなリボン。
君はかわいいね、
彼が言うと彼女は照れたように笑っていた。
それはわたしの目にはひどく間抜けな姿に映った。



家に帰るとプレゼントの山がわたしを迎えた。みんなちょこんと包装紙の上に正座している。
毛むくじゃらの人形をつかんで乱暴にごみぶくろに突っ込んだ。
ビニール越しに真っ黒いビーズの目がわたしをみつめている。
馬鹿だね、
そう言っているように見えて、ふざけた洋服でそいつを埋めた。
色とりどりの山は跡形もなく消え去った。
ごみぶくろの口を縛って玄関に向かった。
途中、なにかに躓いた。
拾い上げてみると"なにか"はちゃちなピンク色をしたルージュだった。
ついでにごみぶくろにぶち込む。
ビニールの向こうのピンク色はただ安っぽいだけで光ってなんかいなかった。
ざまあみろ。






さよならキャンディピンク
20100226
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