所詮わたしは彼女にはなれないのだ。それもそのはず、だって彼女はとびきり優秀だった。わたしにできることといったらただ美味しいコーヒーを淹れることくらいだが、いくら美味しくコーヒーが淹れられたところで到底彼女の穴は埋められない。 「狼氏、曰く。暗い顔してると幸せが逃げてくぜ」 「!」 お馴染みのフレーズに驚いて振り返れば案の定今まさにわたしが悩んでいた人が立っていて、どう答えればいいか分からないわたしはええと、こんにちはと的はずれな挨拶を返した。 「悩みでもあんのかい。一ついいこと教えてやるぜ。狼氏、曰く。"辛い時こそ笑え"」 笑やァ気も紛れるさ、という言葉に無理やり笑顔をつくる。それを見た狼捜査官は満足気に頷いてわたしの頭をくしゃくしゃと撫でると「そうそう、それを忘れんなよ」と言って行ってしまった。 廊下に取り残されたわたしは、暗い顔をしていれば、辛いくせに笑っている彼にわたしの幸せが逃げていかないかなあなんて考えている。 なんて現実的じゃない。 非生産的 20100224 |