「今度お見合いするんだ」という私の言葉に、竹中さんはただ一言「そうか」と言っただけだった。いつも落ち着いた言い方をする人だったけれど、このときもやっぱりとても静かな言い方だった。 「すごくいい人なんだって」 「そうか、それはよかったじゃないか」 なにがよかっただ、竹中さんの馬鹿馬鹿! あなたより素敵な人なんているはずないのに、どうしてそんなこと、言うの。(なんて、悲しくなるから言わないけど) 「頭もいいって」 「そうか」 「仕事もできるって」 「へえ」 「とにかく優しいんだって」 「それはそれは」 なまえにお似合いじゃないか、という竹中さんの言葉にずきん、と胸が痛んだ。 皮肉なんかじゃない、ただ竹中さんは必死に私を慰めてくれようとしている。(あ、は、なんだか変なの、彼氏がお見合いする彼女を慰めるなんて) 「ほぼね、結婚は決まってるの」 「…そうか」 「私じゃないよ、家の都合」 つい弁解してしまう自分に少し嫌気がさした。今更弁解したところで何になるというのか。 「なまえが幸せになってくれるならなんでもいい」 あなたなしの幸せなどありはしないというのに! 幸福の花嫁 20100223 |