!曽良くんがヤンデレ 「なまえ」 背後からの声にどきり、と心臓が鳴った。ゆっくり、自分を落ち着かせるように振り返る。 「そ、曽良、くん…部屋にいたんじゃ、」 「どこに行ってたんです、こんな時間まで」 「あ、あの、ね。ちょっとお散歩してたの」 「へえ、そうですか」 納得してくれた、と安堵しかけて次の言葉に今度こそ心臓が凍った。 「芭蕉さんの部屋まで?」 どうしよう知られてるいつどこでどうしてどうやって、 「そ、ら、くん」 「なんでわざわざ嘘を吐くんです?」 「そ、れは、」 「知られたら困ることでもしてたんですか?」 「違う! してない、そんなこと!」 必死に否定しても曽良くんは冷たい薄ら笑いを浮かべた。 「どうでしょう?なまえは嘘吐きですから」 「違うよ、ねえ曽良くん、信じて…」 芭蕉さんの部屋に行ったのは俳句の話を聞くためだし、芭蕉さんは私と曽良くんのことだって知っている。だからたまに相談に乗ったりして貰ってるだけなの、に。 「なんでそんなに疑うの? 何度も言ってるじゃない! 芭蕉さんとはそんなのじゃないって!」 「なまえこそ嘘吐いたくせに」 「そ、れは! 曽良くんが疑うからややこしくしたくなかった、から!」 「ねえなまえ」 「なまえには僕さえいればいいんです」 愛 し て ま す (彼はそう言って私の首を締める) 20100221 |