小説 | ナノ
※大学生ナイン















目を開けると見慣れた天井が目に入った。まだ少し眠い。二度寝しようかと思ったが起きなければと目をぱちぱちさせた。そのあとすぐに今日はバイトも大学もない休日なことを思い出した。なんだまだ寝れるじゃん。だけど今何時か気になってわたしは枕元にいつもおいてある携帯を取ろうと手探りで探したが、どうも見当たらない。あれどこ行った… 携帯を探そうと体を起こそうとしたら、なんか邪魔なものかお腹に乗ってるを感じた。なんだこれ。それを退かそうとそれに触ると、なんだかそれは温かくて、すべすべしてて…?嫌な予感がしてばっとシーツを剥いだ。


「…!!?」



わたしは叫びそうになったのを我慢した。嫌な予感は的中していた。それはわたしの腕ではない人の腕だった。わたしはその腕の主をばっと見る。その腕の主はわたしの隣ですうすうと気持ち良さそうに寝ているのは、わたしの友達のナインであった。わたしは大いに驚いた。が、それよりも驚くべきことが。


「…えっ」


今度ばかりは声を出さずにはいられなかった。すうすうと寝るナイン、彼が裸だったのだ。しかもなんか妙にシーツがさらさらするなと思ったらわたしも裸で肌に直でシーツが触れていたのだった。ベッドの中にナインは裸、わたしも裸、考えられることはひとつしかない。わたしは混乱した。頭がパンクしそうだ。シーツで体を隠しながら、となりで眠るナインを見る。いったいわたしたちに何があったんだろうか。わたしはとりあえず昨日のことを思い出してみる。昨日たしかわたしの家でキングとジャックとケイトとナインでお酒飲んでて、…だめだ。盛り上がってきたとこから記憶がない。だが仮定を立てるとすれば、酔った勢いでナインといい感じになっちゃって、みんなが空気読んで帰って、そのまましちゃった、という感じだろうか。うわあ。かっと顔に熱が集まる。心臓がばくばくうるさい実はわたし、この隣のナインが好きなのであった。それはもう半年前から好きで、昨日一緒に飲んでくれるってだけで嬉しかったのに、い、いきなりこんな…
わたしはとりあえずベッドから抜け出すと服を着ることにした。下着をつけ、適当にスエットとTシャツを着る。さりげなく洗面所にまで行って髪の毛を整えてから、ナインを起こすことにした。もしかして起きてるかなとベッドの方まで戻ると、ナインはまだ爆睡していた。わたしはナインを軽く揺さぶりながら声をかけた。


「ちょっとナインナイン」
「…ん」
「起きて。起きてよ」


ナインは目を開けたがまたすぐに寝てしまった。「ちょっと、ナインってば」もう一度声をかけてナインの体を揺らす。ナインは再度目を開けた。が、あろうことかナインはわたしの首に手を回してきた。「わっ!」強い力で引っ張られてわたしはナインに倒れ込んだ。


「ちょ、まじなになになにしてんの」
「るせぇ…」


厚い胸板に顔を押し付けさせられぎゅっと抱きしめられる。言わずもがなナインは素っ裸である。直接素肌が触れる感触にわたしはどきどきしっぱなしで、離れようと暴れるものの強い力で抱きしめられていて離れられない。


「なななナインってばちょっとまじなにしてんの離せ」
「んん…… んだよテメェ服なんか着てんじゃねぇぞアァン?」
「ぎゃーっ」


ナインがわたしの首もとに顔を埋めてた上に、服を脱がしてきた。わたしはナインの頭を持って引き離そうとしたがなかなか離れようとしない。舌を這わせるその動きにわたしは熱い感覚を覚えた。うっとわたしは一瞬たじろいだが、ここで引き下がる訳にはいかない。そこでわたしは足でナインを蹴飛ばすという暴挙に出た。ナインはぶはぁと叫びながらベッドから転がり落ちた。わたしは脱がされた服を直しながらナインを睨んだ。


「ってぇなぁ…なにすんだコラァ!」
「こっちのセリフだわ!なにすんのバカ!」
「アァン?今さらなに言ってんだテメェ。昨日あんだけ――」
「ああああもういい!もういい!」


やっぱり昨日わたしたちはしてしまったのを確信した。予想はしていたものの言われると恥ずかしい。わたしはまだ昨日云々を言うナインにさんざん騒いで言葉をさえぎった。それでも恥ずかしくてわたしはトイレに逃げた。わたしは鍵をかけるとしばらく頭を整理しようかと便座に座った。つかなに?なんなのほんとにしちゃったの?ほんとにしちゃったっぽいんだけど。ぐるぐると頭を回す。とりあえず話を聞かなきゃ…いやでもナインには恥ずかしくて聞けないし、はっ!キングかケイトに聞けばいいじゃないか!あっでも携帯向こうじゃん!わたしは再び頭を抱えた。向こうにはナインがいるし恥ずかしいし行けない… でもどちらにせよいつかトイレからは出ないと行けないし… わたしは悩んだがトイレから出ることにした。とりあえずトイレから出てナインに会ったら服着させて帰ってもらおう。そうしよう。わたしは決意してトイレを出た。
リビングを覗いたが誰もいないようなのでやはりまだ寝室にナインはいるのであろう。わたしは寝室のドアを開けた。瞬間、閉めた。


「オィコラァなんで閉めたアァン!?」
「ひいいぃ」


ナインがドアを開けてきた。わたしがドアを開けたら全裸で突っ立ってるナインがいて、反射的に閉めてしまったのだ。いやでもすっぽんぽんで突っ立ってるナインも悪いだろ!見ちゃったわ!わたしはナインが開けようとしたドアを必死に閉めようと押さえ付けた。


「てめぇ…開けろ!」
「いや無理です無理です服着てください無理です」
「知るかコラァ」


わたしが力いっぱいドアを閉めようとしたところやはり男女の力の差は出てくる。ドアがギシギシしてガチで壊れそうだったのでわたしは必死に叫んだ。「服着たら開けるから!服着て!」舌打ちが聞こえたかと思うとふっとドアを開けようとしていた力がなくなった。ドアを閉めようとしていたわたしは必然的にドアに寄り掛かるように軽くこけた。どうやら服を着てくれているようだ。きぬ擦れの音が微かに聞こえた。わたしはナインが意外に素直だったことにちょっと驚いた。案外素直だなあいつ… すると目の前のドアが開いた。わたしはぽかっとしてドアの前に突っ立っていたので、ドアは見事にわたしの頭にごつっと良い音をたててぶつかった。


「いたっ!」
「?、ってオイ!名前大丈夫か?」


ドアを開けたナインはびっくりしてわたしに心配そうに声をかけた。い、痛い… ちょうど額をぶつけたわたしは額を手で押さえていると、ナインがその手をそっと退かした。


「怪我してねぇか?血は出てないよな?」
「あ、うんへいき… ちょっとぶつかっただけ」わたしがそう言うとナインはほっとした顔になった。わたしちょっとびっくりした。なんかこんなナインの優しい顔、初めて見たかも。わたしがじっとナインを見ていると、それに気付いたナインはあろうことかわたしは抱きしめてきた。


「!??」
「あーっマジビビった。ビビらせんなよなあオイ」


油断してた。わたしは慌ててナインの腕の中から抜け出した。ほんとは嬉しいんだけど、でも彼女でもないのにこういうのって良くないし… ナインはわたしが抜け出したのをちょっと驚いているようだ。わたしはえっと、と言葉を紡いだ。


「こ、こういうのはその、そういう関係になってからというか、その…」
「…は?」
「いやだからあの、彼女でもないのにこういうことするのはどうかなーって」
「ちょ、ちょっと待て。お前まさか昨日のこと覚えてねぇのか?」
「昨日のこと?」


わたしはきょとんとした。昨日のことと言われても、わたしは酒に酔ってたためキングやケイトがいた時までの記憶しかない。それ以降はまったく覚えていないのだ。まあだいたい何があったかは検討ついてるけど… わたしがそれをナインに伝えると、ナインは頭を抱えた。わたしは慌てた。


「え…ちょっとなにどうしたの」
「…だーっ!!」
「ええええ」


ナインはいきなり叫ぶと帰ると騒いで家を出て行ってしまった。怒ってたっぽいけど、わたしなにかした…?
若干ナインが怒ってしまっていることにショックを受けながらも、とにかくジャックかケイトかキングに電話しようと思い立った。