小説 | ナノ




※R指定はしないけどいかがわしいです










遅い。綱海のベッドに寝転びながら、部屋の景色を眺める。でも綱海の部屋はもう見飽きたってぐらい見慣れていたのですぐにやめた。あー暇だ。綱海遅い。
私は綱海の部屋で綱海を待っていた。彼自身がここで待っていろすぐに戻って来るからと言ったのだ。ていうかすぐに来るからって言ったくせに遅い… なんかもう眠くなってきちゃったよ。ベッドに寝転んでたせいか睡魔に襲われつつあった。うーん、眠気覚ましに綱海の部屋でも探索するかな。
私はベッドから降りると綱海の部屋の物を物色し始めた。プライバシーの侵害かもしれないがもうお互い様だ。私の部屋に綱海が来た時綱海にパンツ見られたし。だがしかしやはり何回も来てるだけあってどれもこれも見慣れているので探索しても特にめぼしいものはなにもない。諦めてベッドで大人しく待とうとした時、ふとひらめいた。あいつエロ本持ってないかな。すぐにエロ本の代表的な隠し場所であるベッドの下を見てみる。が、なにもない。やっぱこんな見つかりやすいとこには隠さないか… 私はまわりを見渡した。隠せるような場所は見たが、エロ本はなかった。しばらく悩んでいたが、本棚にある高校受験の分厚い本を見た時ピンときた。いつだったか、綱海が音村から借りてきたという漫画に、高校受験の本のケースの中にエロ本を何冊か隠すというものがあったのを思い出した。綱海は単純だからやってそうだ。私は早速高校受験の分厚い本を手に取る。ケースから中身を取り出すと、制服姿の女の子がパンツまる見えのポーズをしている表紙の本が出てきた。あいつJKもの好きなんだ… 中身も閲覧させてもらうかと開こうとしたら、階段を上ってくる音が聞こえて慌ててエロ本を元に戻してベッドにダイブした。
そのあとすぐにドアが開いて、綱海が部屋に入ってきた。あ、あぶねぇ…ギリギリセーフだ。見ると、綱海の手には二人分の麦茶と、おそらく今日の目的であるものが入っているのであろう袋を持っていた。


「わりわり、麦茶入れてたらこぼしちまってよ、時間食っちまった」
「ばっかだなあ…てかなに借りてきたの?JKもの?」
「おう。よくわかったな」


それゃあんたエロ本もJKものだったし好きっぽいからねJK… 私ら中学生だというのに。「勘でわかった」と私は適当に返事をしてベッドから起き上がった。
今日、私が綱海の家に来たのは、健全なる中学生である私たちが興味を持ってしまうのは仕方ない、AVを見るためだった。きっかけは何日か前。ふと綱海と下ネタの話になった時、AVって見たことないけど実際どうなんだろうという話になった。綱海も私も見たことがなかったのだ。その疑問を晴らすべく、綱海がAVを借りてきたのだ。本来なら私もついて行く予定だったのだが、外は暑かったしなにより私は童顔だから借りるの無理じゃないかという話になり、私は綱海の家で待機になったのだ。
ちなみに言うと、私は綱海の彼女でもなんでもない。ただの一人の女友達である。誰かが聞いたらそんな付き合ってもない男女がふたり、密室でAV観賞なんて危ないにもほどがある、襲われたって文句もいえないぞ、なんて思うかもしれないが、私は別に襲われたって文句を言うつもりはない。私は綱海が好きなのだ。片思いはかれこれもう半年ぐらいになる。だから別に、何かあっても私としては相手は好きな人だから構わないわけだ。
私は綱海が麦茶をコップに注いでる間、ひとりでそそくさとDVDプレイヤーの用意をした。よし、あとはDVDを入れるだけだ。


「綱海、AV貸して」
「はいよ」


綱海から受けとったそのAVのパッケージに目を向けると、制服姿の女の子がM字開脚の状態で手足を縛られている表紙と、〔JK監禁、レイプ〕という文字に目がくらんだ。あいつ本性ドSなんじゃ… AVをDVDプレイヤーに入れながら、綱海に話し掛ける。


「綱海Sだったっけ。監禁って趣味わる…」
「いや、それが一番面白そうだったからよ。ていうか男は皆Sなんだよ、俺だけじゃねぇ」
「どうだかねぇ。よくいんじゃん男のドMって。あ、ついたよ」
「そういう奴もいんだよ。リモコン貸せ」


DVDがついて、トップ画面が表示される。綱海は本編再生を押した。画面が一瞬暗くなる。私はベッドの上で横になっている綱海の隣であぐらをかいて座った。


「始まったぞ」
「面白いかな」
「見てりゃわかるだろ」


画面が明るくなった。最初に映し出されたのは、どこにでもありそうな普通の町並み。私と綱海はじっと画面を見た。加奈という女の子が出てきた。この子が監禁される女の子らしい。今のところ普通の女の子らしい場面ばかりで、別にエロいシーンはない。話を聞いていると、加奈ちゃんはひとりの男につけまわされているらしい。そして場面が暗い人気のない路地、加奈ちゃんがひとりで帰っているところになった時、男が車で加奈ちゃんをあっという間に連れ去って行った。「連れてかれちゃった…」「連れてかれちゃったな…」独り言のつもりだったが綱海が返事をくれた。また動画に集中する。加奈ちゃんは鉄格子の檻の中に監禁されていた。危険なムードではあったが、特に大してエロいシーンはない。まるで普通のドラマを見ているような感覚になって食い入るように動画をみる。男は加奈ちゃんに、ブルマの体操着を渡してブラジャーを外してこれを着たら出してあげると告げた。そんなわけないのに加奈ちゃんは本当?といって着替えだした。あ、ブラジャー外した… まあ当たり前だがおっぱいが丸出しになった。私は別にいつも見てるから気にならないが、綱海はどうなんだろうか。横顔を見ようとしたが、意識してるようで恥ずかしくてやめた。着替え終わった加奈ちゃんに、男が近づいた。似合ってるね、加奈ちゃん。俺、興奮してきちゃった。ねえ、エッチしようよ。そんなことを言って加奈ちゃんに近づく。加奈ちゃんは出してくれるって言ったのにと抵抗したが、男は加奈ちゃんを押し倒した。(あー……)エロくなってきた。それからはもう、言わずもがな。部屋に嬌声が響く。見ながら私は、エッチってこんな汚いものだっけ、と思った。だがまあ、興奮しなかったというと嘘になる。若干だが濡れてるが自分でもわかった。でもどちらかと言えば同世代の女の子が嫌な行為をさせられているのを見てるようで胸が痛んだのが多かったというか。ようやくAVは終わった。なんか後腐れの残る最後だったな… まあAVだししょうがないか。それにしても綱海なんもしてこなかったな。別に期待してたわけじゃないからいいけど。声をかけようと綱海の方を見ると、綱海はベッドに突っ伏していた。


「ねーどうだった?私同世代の女の子が傷めつけられてるようで胸が痛んだんたけど」
「あー…普通だった」
「普通ってなにそれ。てか綱海、眠いの?」
「いや…うん」
「ふぅん…あ、ねえ綱海。コンビニ行こうよ。お腹減った。ご飯食いたい」
「…お前一人で行ってこいよ」
「ええ?綱海も行こうよー」
「俺はいい」
「なんでよ?」


うつぶせに寝ている綱海の背中をばしばし叩く。だが綱海は起きる気にならないようだ。仕方ないので腕を引っ張った。何故か綱海は慌てた。どんだけ行きたくないんだこいつ。


「行こうよー」
「馬鹿っ、やめろって」
「いいじゃん行こうよ行こう」
「お、おいっ」


綱海が気を抜いた瞬間にお腹に手をかけてごろんと綱海を仰向けに転がした。綱海はびっくりした顔で私を見た。


「もうお昼だし、綱海お腹減ってないの?コンビニ近いんだから早くい……こ…」


ぎょっとして後半が微妙に言葉が途切れた。ふと特に意味もなく綱海の下半身に目がいったのだが、その、綱海の、股間にあたる部分が膨れ上がっていた。そこになにがあるか、なぜそうなったのかはわかる。だが、だがこれは… いや男の子としてしょうがないと思う。そうだよよく考えればあんなAVみたらこうなっちゃうよな。だけどやっぱり見慣れない、というか男の子のこういうのを初めて見たから、びっくりしてそこを凝視したまま固まってしまった。
すると私がそこを見ているのが気に入らなかったのか綱海が「あーっもう!」と大声をだして、うつぶせになって顔をベッドに突っ伏した。


「ごっ、ごめん綱海!私気づかなくて、ホント、ごめんっ」
「あーっ謝んなよ!……くそ、もうほんと恥ずかしいっつうの…絶対勃たないと思ったのによ…」
「…う、ごめん」綱海は突っ伏したまま私に帰れと言った。でも私は帰る気にはなれなくて、綱海の隣でぐずぐずしていた。そんな私にしびれをきらした綱海が苛立った声で話し掛けてきた。


「お前マジ帰れって…」
「で、でも綱海こんなんなのに帰れないし…」
「あーお前ほんと馬鹿か!俺の近くにいたらお前どうなってもしらねぇからな!」
「えっ?」
「…だからっ、襲うぞっつてんの!襲われたくなかったら帰れ」


綱海はそう言うと上げていた顔をまたベッドに突っ伏した。お、襲うぞって… 私みたいなのでも襲うのかよ… 私は一瞬帰ろうか迷ったけど、ベッドのシーツをぎゅっと掴んで綱海に言った。


「いいよ」
「は?」
「綱海なら、私、襲われてもいいよ」


綱海は顔を上げた。ぽかんとしている。まあそりゃ驚くよなあ。もう一度私がいいよと言うと、綱海ははっとして真剣な顔で私を見た。


「お前それ本気で言ってんのか?」
「うん」
「お前…いいのか?それで」
「うん」
「…だめだろ、それじゃ」
「え?なにが?」
「馬鹿かお前。もっと自分を大切にしろよ」


綱海はちょっと怒ってるように見えた。ああ多分、綱海は私を軽いって思っただろうな。でも私は実際、綱海に抱かれても構わないと思っている。だって私、綱海好きだし。引かれたかもしれない。でも、これが私のほんとの気持ちだ。


「わ、私…本気だよ」
「…お前な、」
「大切にするとかよくわかんないけど、私、でも、綱海になら、いいって、ほんとに思ってる。ていうかこういうことしていいって思うの、綱海だけっていうか…」


最後はごにょごにょしながら言った。なんかこれもうほぼ告白みたいじゃん…
すると綱海は寝転がっていた体を起こして、私の前に向き合うようにして座った。真剣な綱海の目が私を捕らえる。それにどきりとした。


「お前、ほんとにいいのか?」
「うん」
「ほんとにいいんだな?」
「うん」
「ほんとにほんとだな?」
「うん」


綱海は私に何度も確認した。そして最後に確認すると、そろそろと綱海の腕が伸びてきた。次の瞬間にはもう抱きしめられていた。背中に手を回される。こ、これはやばい。心臓が激しくどっきんどっきんいってる。絶対綱海に聞こえてるよこれ!そしたらゆっくりベッドに押し倒された。私の顔の横に手をつくと、綱海が顔をあげた。目が合う。そしたら綱海がすっと目を細めた。まるで愛しい人を見るようだ。そっと頬に優しく手を添えられた。その間私の心臓はずっと高鳴っていた。
手が頬から離れる。綱海の手が私の服をそっとめくった。お腹を撫でられるのがわかった。綱海の手は私のお腹あたりで留まっていてそれ以上進行はせず、さわさわと私のお腹を撫で回している。そしたら綱海の顔がぐっと近づいてきたと思ったら、唇に柔らかい感触。キス、されちゃった。心臓がどきどきうるさい。綱海の顔が離れて、今度は啄むように何回かキスされた。すると私のお腹の上にあった綱海の手が、すすすっと私の胸の方に移動していった。綱海の手が、私のブラジャーに触れた。すると綱海の手が私の服を胸元までめくった。おっぱい見られた…!さらに進行して私の胸に触れる。恥ずかしさに私が目をつぶった時、がちゃんと部屋の下で音がした。
びっくりして綱海と顔を合わせる。そしたら今度は、階段を上がってくる音がして、私と綱海は慌てて飛び起きた。どうやらさっきのがちゃんという音は、玄関が開く音だったらしい。


「だ、だれ…」
「た、多分親」


しばらく綱海と無言で様子を伺っていたが、物音は綱海の部屋に入ってくることはなく、階段を降りて行った。あ、あぶなかった…
ちらりと綱海の方を見ると、目が合った。続き、やるのかな。でもなんかもう雰囲気なくなっちゃったし… あ、でも綱海まだ勃ってる。綱海にどうするのという視線を向けてると、綱海が口を開いた。


「あー…ごめん」
「え、なんで謝るの」
「やっぱやめよう」


綱海は私に背を向けた。やっぱやめようって、綱海まだ勃ってんじゃん。前に回って綱海の顔を覗く。綱海は顔を真っ赤にして綱海は慌てて目を反らした。


「お、お前服、服直せ」
「え、あ、うん」


綱海に言われて服を見たら綱海に胸元までめくられたままになってた。あーあ、私こんな可愛くもないブラジャーしてきちゃってるよ。服を直して、改めて綱海を見る。綱海は相変わらず真っ赤だった。「見んなっ」顔を背けられてしまった。


「あのさ、綱海」
「…なんだよ」
「綱海、その、…もうしなくて、いいの?」
「い、いいよ、もう。親帰って来たっぽいし」
「でも、あの、綱海…」


さっきよりもおっきくなってるし…と、言いそうになってやめた。これ言ったら綱海爆発してしまいそうだ。私がうじうじしてると、綱海が背を向けたまま話し掛けてきた。


「やっぱ、こういうことすんのは駄目だ。お前に悪い」
「私、さっきも言ったけど平気だよ」
「お前がよくても駄目だ」
「いやでも綱海が辛いんじゃ…」


私が言うと、綱海はあーもう!と叫んでこっちを向いた。うわ、綱海顔赤っ。綱海は顔を真っ赤にさせたまま、まっすぐに私を見た。少しどきりとする。


「あのなあ!」
「は、はい」
「俺は!」
「はい」
「お前が好きなんだよ!」
「はっ……はい?」


聞き間違えかと思って唖然として聞き返した。だーかーら!綱海は何度も言わせるなと言うように強く言った。


「お前が好きなんだよ!だから、付き合ってもいないのに、お前にこういうことするのが嫌なんだ」
「え……なにそれ…」


綱海が 私を好き?だって綱海私のパンツ見ても笑ってたし私との関係をからかわれた時ただの友達だって散々騒いでたし、そんなそぶりなんて全然…


「う、嘘」
「嘘じゃねぇっての。好きでもねー女を部屋にあげたりしねぇよ」
「だ、だって、綱海…」


そんなそぶりなんてなんにもしなかったじゃん… 鼻がつーんとして視界がじわりと歪んだ。やばい泣きそうだ。てか泣く。下を向いて瞬きをしたら、私の涙が一滴、ぽつんとベッドに落ちた。涙はすぐにベッドに染み込んで、染みを作った。


「お、おい、なんで泣いてんだよ」
「や、だって綱海が…」
「そんなに嫌だったのか?その、さっきの」
「ち、ちが…」


ボロボロと涙が止まらなかった。悲しいんじゃなくて、嬉しい。すごく、すごく嬉しい。初めて嬉しくて涙を流した。ぐずぐずしながら涙を拭う。ちらりと綱海を見てみると、綱海は慌てていた。手がどこにいったらいいのかとふらふらしている。私は口を開いた。


「あの、私もなんだけど…」
「へ?」
「私も綱海好きなんだけど」


綱海は瞬きをした。なにいってんだお前、という顔だ。だけど言葉の意味をようやく理解したのか、ぼんっと綱海はさらに赤くなった。「や、お、お前、いま、お前」意味のわからない日本語を話し始めた。 私は勢いづいて綱海に言い寄った。


「もうっ、なんで泣きながらこんなこと言わなきゃなんないのっ」
「お前、いま好きって…」
「そーだよ好きだよ!もお、なんでこんな…順番おかしいでしょ…」


ぐずぐずしながら下を向いてベッドのシーツを握り締める。普通順番逆だろ。こんな風に告白すると思わなかった… するといきなり伸びてきた綱海の手に抱きしめられた。びっくりして綱海を見ようとしたら、強く抱きしめられて見れなかった。綱海の厚い胸板に顔を埋めながら、さりげなく綱海の背中に手を回した。すると綱海の声が上から降ってきた。


「やっべぇ…」
「…?どしたの…?」
「やっべえ、俺、今嬉しすぎて死にそう」


ぎゅうっとさらに強く抱きしめられる。ちょっと苦しい… でも私も嬉しかったからなにも言わなかった。
しばらく無言で抱きしめあった。まるで世界にふたりっきりみたいだった。幸せだ。しかもこんなにはっきりした幸せは初めてだ。だけどやっぱり苦しかったから背中に回した手で背中を叩いた。気づいた綱海がようやく解放してくれる。ぷはっと息を吸うと、私が苦しかったのがわかったらしく謝ってきた。


「悪い」
「や、平気平気。大丈夫だよ」
「…あのさ」
「なに?」
「俺達、いま付き合ってんの?」
「え、そうじゃないの?」
「うん、やっぱりそうだよな… よかった…」
「綱海、私お腹減った。コンビニ行こうコンビニ」
「…お前このタイミングでそれって…」
「じゃあ手繋いで行こう」


それならいいでしょ。私が言うと、綱海は照れた顔でしょうがねぇなと言った。か、かわいい…!部屋を出て手を握ってあげると今はいいからと言われてしまった。下に綱海の親いるんだったっけ。
家を出る時、ほっぺに優しくキスをされた。髪の毛が首筋に当たってくすぐったいよと言おうとしたけど、幸せだからいいかと言うのをやめて、綱海の手を握った。




下心で手に入れた幸せ/綱海
20110822