小説 | ナノ
大分履き古して薄汚れたローファーでアスファルトの上にあった小石を蹴ってやると、力任せに蹴られた小石は明後日の方向へ吹っ飛んでいき、駐車場に停めてあった車のタイヤに当たった。たまたま車の下にいたらしい猫が慌てて飛び出し、ものすごいスピードで家と家との間を通って消えていった。いつもならおおすごいとキングあたりにくだらないメールを送るところだが今のわたしはかなりブルーなので携帯を開く気力すらなかった。
今日はわたしの好きな人、エースの誕生日であった。わたしはエースにプレゼントをあげようとウキウキだった。そして放課後なったつい30分前ほど、誰もいない教室でわたしはエースに念願のプレゼントをあげることに成功したのだった。エースはかっこよくてモテるから他にもたくさん女子からプレゼントをもらっていたようだったけど、わたしとエースは仲が良い方だったからエースは知らない娘からもらってばっかりだったから嬉しいと言ってくれた。わたしはそれが嬉しくてたまらなかった。そしてわたしが、本題である告白をしようとした時だった。あのね、勇気を出して口を開いたわたしの言葉を、ドアの開く音が遮った。振り向くと隣のクラスの女の子がいて、わたしの存在を気にしているようだったけど、その娘はエースの名を呼んだ。エースはその娘を見るとぱっと笑顔になった。その笑顔たるや、わたしが今まで見た中で一番輝いていたのだ。わたしは察してしまった。でもそれが嫌で、わたしは震える唇でエース、と名を呼んだ。エースはああ、とわたしを見ると、彼女なんだと照れ臭そうに言った。彼女。わたしは知らなかった。エースに彼女がいたなんて。わたしは動揺を抑えながら、そうなんだと無理矢理笑顔を作った。わたしは引ったくるようにスクールバッグを手に取るとじゃあ邪魔物は退散するね、と言ってエースの呼び止める声にも耳を貸さずに教室を飛び出た。泣きそうだった。エースの声に足を止めていたら、わたしはきっと泣いてしまっていただろう。教室を出て早く学校から出ようと廊下を走っていると目から勝手に涙が溢れ出した。ボロボロと涙を流しながらわたしは靴を履き替えて学校を飛び出した。その頃にはもう涙やら鼻水やら垂れ流しで、自分でも汚い顔だったと思う。わたしはとりあえずティッシュで顔面を拭いて歩きはじめた。そして道の真ん中に小石を見つけて冒頭にいたるわけだが。
今だに目から涙は止まらない。絶対鼻赤いだろうしあーあ家に帰るころには元に戻ってるかな。なんて思いながら服の袖でごしごしと目をこすっていると制服のポケットからバイブ音がした。目をこするのを止めてポケットから携帯を取り出して開いてみると新着メール一件と表示されていた。エースだったら嫌だなあと思いながら開くとそれは見当違いだったようでただのメールマガジンだった。ホッとしつつも携帯を閉じたところで、ふと携帯についているストラップが目についた。それはわたしが誕生日にエースにもらったものだった。わたしがいつかエースと帰った時に駅前の店で見かけたストラップを軽い気持ちであのストラップかわいいねと言ったのをエースは覚えてくれていて、誕生日にこれをくれたのだ。わたしは嬉しくてずっとたまたま教室にいたサイスにヤッベエエエもらっちゃったヨオオオオと叫んでいたのを覚えている(サイスは迷惑そうな顔をしていたが)。
けれどそんなものは今のわたしにとって苦い思い出にしかならない。胸が苦しくなって、また鼻がつんとしてきてじわじわと視界が歪み、あっという間に目に留まらなくなった涙が溢れ出しアスファルトに染みをつくった。わたしを好きじゃないくせにこんなのくれたって嬉しくなんかないよ。わたしは携帯とストラップを別々の手に持つと力任せに引きちぎった。ストラップはエースにもらったやつしか付けてなかったから引きちぎるには困らなかった。わたしの力が強かったのか、はたまたストラップが弱かったのか、案外ストラップは簡単に引きちぎれた。わたしはストラップをぎゅっと握ると走り出した。目指すは近くの土手。あそこには川があったはずだし、今の時間人はほとんどいないはずだ。無我夢中にひたすら走っていたせいか土手には思ったよりも早く着いた。はあはあと息を荒くしながら土手の坂を駆け降り、川のぎりぎり淵まで来たところで邪魔なスクールバッグを投げ捨てるように地面に放り投げ、手に持っていたストラップを渾身の力を込めてぶん投げた。ストラップは川へと飛んでいき川にぽちゃんと落ちた。もらった時はあんなに大事にしようと思っていたのに、捨てようと思えば案外簡単に捨てられるものだ。わたしはすうと息を吸い込むと、声の限り叫んだ。


「好きでもねぇのに優しくなんかするんじゃねぇーよバカヤロー!!!」


力いっぱい叫んで、おそらくかなり響いたというのにわたしの声は虚しく消えていった。辺りはまるでなにもなかったかのように静まり返っていた。こんなふうに、わたしの気持ちもなかったことにできればいいのに。だけどそんなことができるはずもなくわたしの胸は痛いままだった。
彼女なんて。エースは一言も話してくれなかった。エースはたまたまわたしに話さなかっただけか、恥ずかしかったのか、それともわたしなんかには話す必要はないと思ったのか。わたしにはわからない。わからないことだらけだ。また溢れ出してきた涙を拭うこともしないでわたしは突っ立っていた。
すると背後でがさりと音がして、振り向くと見慣れた金髪が目に入る。すぐに誰かわかった。


「なにやってんだコラァ」


ナインはわたしを訝しげに見て言った。わたしは慌てて俯いた。泣き顔を見られただろうか。まだ何も言ってこないから多分気づかれてはいないだろうけど。わたしは「なんでいんの、」と泣いてるのを必死に隠しながら声を出した。


「お前が走ってくの見えたからついて来たんだけどよ…」
「…そ、そっか」
「…お前、泣いてんのか?」


ぎくりとしてわたしは視線を泳がした。どうやらばれていたらしい。わたしは泣いてないよと言おうとしたが、ナインが追い撃ちをかけるみたいに心配の言葉を言ってきたのでもうすでにわたしの目には涙がたまっており今声を出したら泣きそうだったので何も言えなかった。


「お、おい大丈夫かよ?」
「……っ」
「なにがあったんだ?」


ナインがわたしの顔を覗こうとしてきたのでわたしは必死に顔を逸らした。わたし今顔汚い絶対見られたくない。が、ナインがしつこくなにがあったと心配してくるのでわたしは泣くのを承知で仕方なしに口を開いた。


「…ふ」
「ふ?」
「ふられたの!」


顔をあげるとぽかんとした顔のナインと目があった。完全に顔を見られたがこうなればヤケだ。わたしはナインの腕を掴むと、自らの心の内を爆発させた。


「ふられたの!エースに!」
「…は」
「ていうか聞いてよわたし今日エースに告ろうとめっちゃ心込めてウッキウキしながらチョコ作ったのにさあ!いざ渡して告ろうとしたらなに?彼女?聞いてねぇよ!」
「…お、おい」
「だいたいわたしのこと好きじゃないくせになにストラップとかくれちゃって優しくしてくれちゃってんのバカじゃないの!?ムカつきすぎてストラップ投げ捨てたわ!バカか!ムカつくわ!爆発しろ!リア充帰れ!」


息をせずに全部言ったものだからぜえはあと息が切れた。肩で息をしていると、わたしは自分がナインに掴みかかるようにしていたことに気づいた。興奮していたものだから気づかなかったようだ。わたしはナインの腕を掴んだまま、ナインの胸に頭を預けた。「もう、最悪…」伝えたかったことも伝えられないで逃げてきちゃって、エースのあんな笑顔見ちゃって。そしたらまた身体の水分がなくなるんじゃないかってくらいボロボロ涙が溢れ出してきた。わたしの涙は目からこぼれ落ちてぬかるんだ地面の土に吸い込まれていった。いくつもこぼれ落ちていくのを眺めていると「あー、えっと」気まずそうにナインが口を開いた。


「よくわかんねぇけどよ」
「……」
「男なんて他にも死ぬほどいるんだからよ、エースにふられたぐらいでそんな落ち込むなよ」
「……」


わたしは返事をしなかった。代わりにナインの腕を掴む手に力を込めた。顔は見えないけれどナインはおそらく心配そうな顔をしているのだろう。わたしは俯いたまま言った。


「わたし、エースじゃなきゃ嫌だ…」


ナインの腕を掴んだ手に、さらに力がこもった。「だいたいっ、」わたしがさらにエースの愚痴を言おうと勢いづいた時、勢いづき過ぎたのか、ぬかるんだ地面に足が滑った。「わっ」かかとから滑ったので後ろ向きに倒れそうになり、ナインの腕を掴んでいたわたしは必死に腕にしがみつこうとしたが時既に遅しだったようで、一気に視界が反転した。「わあああっ」「うおおおお」わたしはナインを巻き込んで川に倒れ込んだ。視界が暗くなり全身が冷たい水に浸かったのがわかった。きっと下着までびしょびしょだ。目を開けられず鼻に水が入る嫌な感覚にわたしははっとして慌てて手探りで地面を探して手をつくと、川から顔をあげた。やはり鼻に水が入ってしまったようでげほげほと咳込んだ。隣でナインも同じように咳込んでいるのが聞こえた。しばらく二人して咳込み、息ができるようになったらしいナインがら口を開いた。


「おっ…お前なぁっ」
「ご、ごめ…」


げほげほとわたしは咳込みつつ返事をした。まだ川に座り込んでいるから下半身が水に浸かったままだし全身びしょびしょで気持ち悪い。髪の毛もぐっしょり濡れてしまっていて、若干暖かくなってきたとはいえ今の季節にこのままでは風邪を引きそうだ。するとザバッと水音がしたので見ると川からナインが立ち上がっていて、服の水をかるく絞っていた。ナインもびしょびしょだ。いつもワックスで固められていた金髪も水に濡れてぐっしょりしていた。ナインは服から水を絞り終えたのかわたしに手を差し延べてきた。


「立てるか」
「あ、うん」


ナインが差し延べてくれた手をとって立ち上がる。水で服が重くてひどく立ちにくかった。わたしが立ち上がると服から水がぼたぼたと滴り落ちていったのでわたしはナインにならって服から水を軽く絞ってから陸に上がった。既に陸に上がっていたナインは置いてあった自分のスクールバッグをあさっていた。わたしはそれを見てわたしも地面にバッグ置いておいて良かったと少し安心する。バッグをあさっていたナインが立ち上がり、わたしに向かって何かを投げた。「うわっ」慌ててそれを受け止める。見るとそれはタオルで、どうやら拭けということらしい。


「ナインが拭きなよ。わたしが巻き込んじゃったんだし」
「俺はいい。お前拭いてろ」
「でも、」


わたしがなお反論しようとするとナインは「あーっめんどくせぇなあ」と言ってわたしの手にあったタオルを掻っ攫うように取るとわたしの頭を乱暴にがしがしと拭き始めた。「うわ、ちょ、ナインっ」「じっとしてろ」拭き方が乱暴過ぎて若干頭皮が痛いのだがこれがナインの優しさだと思うとなにも言えなかった。落ち込んでいたからむしろその優しさが嬉しくて、視界がじわりとにじんできたくらいだ。わたしは思わず俯いた。涙が溢れそうなのを必死に堪えた。ここでまたナインに心配かけたくない。「こんなんでいいか?」わたしがなんとか涙を引っ込めたころにちょうどナインが髪を拭くのをやめた。ナインが乱暴に拭いたからきっと髪はボサボサだろう。「ん、ありがとう」わたしは髪を手櫛で軽く直しながらお礼を言った。ナインはわたしの頭にタオルを置くと後は自分で拭けよ、と再びバッグをあさりはじめた。わたしは毛先の水分をタオルで吸い取りつつ自分のスクールバッグから櫛を取り出して髪を梳いた。ナインが乱暴に拭いた髪は絡まってしまっていて梳かしにくかった。髪を梳いていると背後から名前を呼ばれたので振り向くとナインが手にジャージを持って立っていた。


「なに?」
「これ着とけ」
「えっ」


ナインが差し出してきたのは学校の指定ジャージ。気持ちはうれしいが、巻き込んだ側としてさすがにこれを着るわけにはいかない。


「いやさすがに悪いって。いいよナイン着なよ」
「いいから着ろ。そんままだと風邪引くだろうがコラァ」
「それはナインもでしょ」
「俺はいいんだよ家近ぇから」
「いやそういう問題ではなく」
「いーから着てろっ」


オラ、とジャージを一方的に押し付けナインはくるりとわたしに背を向けて少し距離を取った。どうやら着替えろということらしい。確かに今の時間この付近に人なんてわたしたちぐらいしかいない。わたしは口を開こうとしてやめた。今のナインに何を言っても無駄そうだったから。わたしは「ありがとう」とナインの背中に感謝を投げかけるとその場で着替え始めた。下着は脱ぐわけにはいかないので制服と肌着だけを脱いでその上からナインのジャージを着ることにした。さすがにナインも男というだけあってぶかぶかだったので袖と裾を何回か折ってわたしの手足の長さに合わせた。濡れたは制服は手に持つわけにもいかないので絞って仕方なくバッグに詰めておいた。家に帰ってすぐ出せばなんとかなるか。バッグに制服を詰め終わったところでナインに声をかけた。


「ナイン、もういいよ」
「お、おう」


ナインは振り向くとわたしを見て何故か視線を逸らした。首を傾げるわたしにナインは黙って自分のバッグを持つと、俺今日チャリだから送るとか言い出した。いや待てよその口ぶりだとナインがチャリ漕ぐみたいに聞こえるけどそんなびっしょびっしょの服で今の季節にチャリ漕いで正面から風なんか受けたら完全に風邪引くぞ。


「いやいやいやわたし漕ぐ」
「アァン?完全に無理だろアホか」
「でも風邪引くって絶対。ていうか頭拭きなよもうっ」


わたしは手に持っていたナインのタオルでナインの頭を拭こうとしたがナインが無駄にでかいせいで背丈がどうも足りなそうだったので必死に背伸びして拭いた。タオルはわたしの髪の水分をすでに吸ってしまっているが拭かないよりはマシだろう。するとナインがぶはっと吹き出した。


「な、なに笑ってんの」
「いや、なんでそんな必死に俺の頭拭いてんだよ。バカか」
「はぁ?だってこのままじゃ風邪引くじゃん」


ナインは今だにくつくつと笑っている。どうやら必死に背伸びしてナインの頭を拭くわたしの姿が面白かったらしい。ひ、人の親切心をコイツ… わたしがわざと乱暴に頭をがしがしと拭き始めるとナインは笑いながらもういいとわたしからタオルをむしり取ると、チャリ上にあるからと土手を登りだした。わたしは慌てて置いておいたバッグを取るとナインを追いかけた。ローファーまで水を吸っていて歩いていて気持ち悪かった。土手を登り終えたところで黒い自転車が一台置いてあるのが見えた。どうやらそれがナインのチャリらしく、ナインはバッグをチャリのカゴに放り込むとわたしに手を差し延べてきた。どうやらバッグを寄越せという意味らしい。わたしは素直にバッグをナインに渡した。ナインはわたしのバッグをカゴに入れると自転車に跨がった。


「ほんとに漕ぐの?」
「あたり前だろ」
「だって絶対風邪引くよ。そんなびっしょびしょで」
「引かねぇよ。俺一年ぐらい風邪とか引いてねぇから」
「いやでも」
「いーから早く乗れって」


これ以上なにを言っても無駄なようだ。わたしは諦めて自転車の荷台に跨がった。どこかを掴もうとして一瞬悩んでから控え目にナインの服を掴んだ。服はやはりぐっしょりと濡れていて冷たくなっていた。ゆっくりと自転車が動き出した。荷台に乗っているというのに風が冷たくてわたしは思わず身震いした。前で漕いでいるナインは相当寒いだろうとわたしは声をかけた。


「ナイン寒くない?」
「あ?へーきだこんなもん」


嘘だ。絶対寒いくせに。なんだかその優しさがじんわりと心に沁みて、胸が熱くなった。また泣きそうになってナインの背中に頭を預けた。
ナインの後ろに乗っているとまたエースのことをまた思い出してしまって我慢できずに少し泣いてしまった。わたしが泣いているのに気づいたのかそうじゃないのか、ナインは家に着くまでわたしに何も話し掛けてはこなかった。










わたしの家に着いたのは土手を離れて約10分後だった。よく考えてみるとナインの家の方が土手から近い上にわたしの家とは方向が違う。わたしの家に行くのはナインにとって遠回りでしかないというのにびしょ濡れの体でわざわざ送ってくれたのだ。それに気づいたのはわたしの家に着いてしまってからだったし、言ったところでどうにもならないのでわたしはあえてそれを口にはださなかった。チャリから降りてカゴからわたしのバッグを取って、なんだかあっという間だった。けどわたしはエースのことがあったせいかなんだか寂しくて、まだナインと一緒にいたいという気持ちがわたしの胸の奥から溢れ出してきた。でもこれ以上ナインに迷惑をかけるわけにはいかない。わたしは気持ちを抑えながら軽く頭を下げた。


「ありがとナイン。送ってくれて」
「お、おう」
「ジャージ洗ったら明日返すね」
「バカ。明日土曜だろ」
「あ、そっか」


わたしがあははと笑うと、ナインもつられたように笑った。そうか明日は土曜か。ということは明日学校はない。エースに会わなくて済む。けれど同時にナインや他の友達に会えない。いつもだったらそれくらいなんでもないのに、今のわたしはそれが寂しく感じて少し胸が痛んだ。するとナインが口を開いた。


「あー、あのよぉ」
「なに?」


ナインは照れるように頭をかくと、自転車のハンドルに寄り掛かるようにしてわたしをちらりと見た。いったいなんだというのか。わたしが首を傾げると、ナインは困ったかのように今度は視線をおよがせた。


「あー、その、俺がこんなこと言うのなんだけどよ、」
「?うん」
「あのよ、もしお前がその、さ、寂しいとか、そういうこと思ったらいつでも連絡していいからな」
「…え」


わたしは目を丸くした。その言葉は、確実にわたしが今言われて嬉しい言葉TOP3に入っていた。いやむしろ1位なのかもしれない。しかしそんな言葉がナインの口から出るとは思ってもみなかったのでわたしは口をぽかんと開けたまま唖然としていた。ナインの青い瞳と目が合う。わたしがようやくはっとして口を開こうとした時にはナインは慌てたように「じゃ、じゃあな!」と凄まじいスピードで自転車を漕いでいってしまった。
…今わたしの顔は恐らく耳まで赤くなっていることだろう。さっきまでエースが好きで悩んでいたというのに、なんなんだろうこの気持ちは。胸がすごく熱くて、まるで… (うわああああ)頭に浮かんできた甘いキーワードを振り払うようにわたしはぶんぶんと頭を横に振った。思わず借りたばかりのナインのジャージをぎゅっと握り締める。

わたしがナインにときめくなんて、そんなの、有り得るわけない!




ラブアフェア/ナイン
20120329