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和谷くんが進藤くんに負けた。プロ試験で、だ。私は和谷くんがずっと頑張っているところを見ていたから、プロ試験の大切さがわかっているつもりだ。碁を続ける和谷くんにとって、それは人生で一大イベントといっても過言ではないのだ。それに失敗した、どんなに悔しくて悲しいか。聞けば師匠も絶対に受かる、合格だと言っていたらしい。なのに、なのに負けたのだ。進藤くんに。黙って下を向いてしまっている和谷くんを見て、私が悲しくなってしまった。思わずボロボロと涙が出た。あんなに頑張っていたのに。あんなに、あんなに囲碁が好きで、頑張っていたのに……!


「…な、なに泣いてんだよ。まだプロ試験に落ちたって訳じゃないんだぜ…?」


そう言って私を励ます和谷くんの声も、震えていた。私の肩におかれた手も震えている。和谷くんだって悔しくて悲しい。和谷くんが泣きそうなのは私でもわかった。「ご、めん」必死に涙を拭うけれど、それでもあふれでる涙。もうきりがない。


「…あのさ、もし俺が受かったら」


まだ震える声で和谷くんが言った。私はただただ泣きながら頷くことしか出来なくて、ぐずぐずになりながら頷いた。


「…俺の、彼女になってくれないか」


涙は止まらなかった。むしろ前より号泣したほどだ。嬉しくて、悔しかったからだ。私は泣きながら何回もうんうんと頷いた。受かってね、和谷くん。私も和谷くんの彼女になっても恥ずかしくないように、頑張るから。だから、和谷くんもいつか進藤くんにも勝てるぐらい、強くなってね。



繋いだ手と手、離れぬようこのまま縫いとめてしまおう

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