ぶー、ぶー、と機械的で規則性のあるバイブ音。位置からして、それは俺の上着のポケットから発せられているようだ。そういえばマナーモードのままだった。俺は座っていた状態から立ち上がった。上着のポケットから携帯を取り出して見てみると、それは幼なじみからの着信だった。何だろうか、と思いながら電話に出てみると少女特有のソプラノ・トーンが耳についた。
「豪炎寺!?早く来て!」
「はあっ?」
早く来て?なにか急ぎの用でもあるのだろうか。別にあいつの家は俺ん家から遠くないし、行けない距離ではない。むしろ五分もかからないぐらいの距離だ。別に行っても構わないのだが、こんな切羽詰まった状態でいったい何の用だ?
「なんかあったのか?」
「ごっ…!ごっごっごっごっ…!」
「ご?」
「ゴキブリがっ…!」
数分後、あいつの家にガンダッシュするとゴキブリが二匹いた。前と後ろで挟まれて身動き取れなかったらしい。それにしても驚いたのは、彼女が風呂あがりでゴキブリに襲われていてバスタオル一枚だったということだ。体のラインに思わず見惚れてしまい、殴られたのは言うまでもない。
豆腐の角にでも躓いてしまえ!