ロストガール | ナノ


「今日から一緒に練習に参加する、桃原だ」



部室で鬼道にみんなに紹介されて「よろしく」と軽く頭を下げた。サッカー部の面子はほとんど知ってるし紹介も済ませていたが、こんな風に公式に紹介されたのは初めてだ。なので一応軽い自己紹介をして終えた。



「桃原、ポジションはどこができる?」

「GK以外ならどこでもいけるよ」

「そうか。じゃあまずは皆と同じように練習に参加してくれ。それからポジションを決める」

「わかった」



鬼道に言われて、私は佐久間達がやっている練習に参加した。その時私は皆とボールを蹴るという久しぶりのことにすごくわくわくしていて、他のこと、男と女の体力の違いなんて考えていなかった。







心臓が近くにいる佐久間に聞こえるんじゃあないかってぐらい大きくばくばくいってる。ぜぇぜぇ、と一生懸命肺に酸素を送るがそれでも追いつかない。私は練習に疲れきっていた。体力を根こそぎ持っていかれた気分だ。私は練習にぐだぐたになっているが、佐久間や源田などは息切れは多少していても私ほどには息切れをしていない。ああ、そうかこれが。


(男女の、違いっ…)


舐めていた。体力には自信があった方だし、平均男子を上回るぐらいだとも思っていた。前の学校でそうだったように。だけどサッカーの強豪校、帝国学園を舐めていた。彼らは平均男子の体力共に運動神経を遥かに上回っていた。つまり私を大きくしのいで。



「おい桃原、大丈夫か?」

「だ、大丈夫…」

「あーあ。最初はすっげーキツいからな、うち。」



まあそのうち慣れるって。そう付け足して佐久間はまた練習に参加しにいってしまった。あいつはもっと思いやりをもった方が良いと思う。佐久間と対照的に源田は私を心配していてくれた。本当に源田を見習えよアイツ…!すると向こうの方で鬼道が私を呼ぶ声がした。行くの面倒くせぇ。



「桃原、鬼道が呼んでるぞ」

「…今、いく」



疲れきった身体を動かして鬼道の方へと向かった。源田は「先に練習してる」と言って練習に参加しに行った。私がひとりで鬼道の方に向かうと、鬼道は腕を組んで私を待っていた。



「桃原、お前のことは大体わかった」

「…はあ」

「技術に問題はないな。だが問題は体力だな。体力作りを基本にトレーニングした方がいいだろう」

「了解」

「という訳で今から校舎20周してこい」

「…は?」



校舎20周?普通10周とかじゃないのか。しかも帝国学園の校舎は無駄にでかい。それを普通の倍の20周?思わず鬼道は冗談を言ってるのかと思ったが、鬼道はそんなことを言うような性格じゃない。おそるおそる鬼道を見上げ「…マジで?」と聞くとマジだ、と返事が返ってきた。本当、強豪校を舐めていた。




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