ロストガール | ナノ

放課後、総師にサッカー部に入部するための入部届けを出して今日一日を終えた。今日はオフらしいからサッカー部で活動するのは明日からだ。明日からか。果たして女であることを上手く隠し通せるだろうか。体育の時は体操着を制服の下に着るようにすることにしているが、部活の時はみんなで部室で着替えることになっている。私はそれも制服の下に着ることにしているが、どうしても着替えなければいけないことになったら総師にフォローしてもらうことになっている。ここまですれば多分ばれないとは思うがそれでもハラハラしたりする時がありそうだ。体育もなんにもない今日ですら少しドキドキしていたから。いそいそと私が下駄箱で靴を履き替えていると、「おい」誰かに話しかけられた。振り向くとそこには同い年ぐらいの男子生徒がいた。灰色っぽい髪に右目の眼帯、思い出した。確か同じクラスの奴だ。



「…何か用?」

「お前、転校生だよな?」

「そうだけど」

「サッカー部に入る奴ってお前か?」



どうやら単純に転校生の顔が見たいという訳ではないらしい。私がサッカー部に入るという情報を知っているということはもしかしてこの人もサッカー部員なのだろうか。



「そうだけど。お前サッカー部なのか?」

「ああ。ついさっき新しい奴が来るって聞いてさ。あ、俺は佐久間次郎だ。よろしくな」

「俺は桃原蒼二。よろしく」



軽く自己紹介を終えると、帰り道がたまたま一緒だったので色んなことを話した。他のサッカー部員のこととか、サッカーのポジションはどこだ、とか。ほとんどがサッカーの話題で、不思議なくらい話があった。やっぱりサッカーが好きなんだ、と自分で再確認したぐらいだ。






「…なんか桃原ってさ」

「何?」

「女みたいなだな」





- ナノ -