ロストガール | ナノ



果たして誰に相談するべきだろうか。佐久間…は、多分信じないだろうし、信じたところで面白がるだけ、的確なアドバイスをくれるか不安だ。というか、誰に相談しようと桃原の事を話そうなんて気にはならない。佐久間にさえもだ。俺は教室の机の上に突っ伏しながら考えた。とにかく俺がどうしようと何を考えようと、俺が桃原の真実を知ってしまったことには変わりはないのだ。



「源田どうしたんだよ?元気ないじゃん」

「別に…なんでもない」



言ってから、俺はため息をついた。そんな俺に佐久間は呆れたような顔をすると「数学の宿題やってくる」と言って自分の席についてしまった。俺は佐久間がいなくなった後も考えた。さっき考えていて思ったのだ。桃原は女。そこから俺はある疑問にたどり着いた。何故、桃原は女として帝国に来たのだろうか。俺は頭をフル回転して考えたが、まったく理由が思い付かない。もしかしてサッカーをするために帝国にきたのか?と思ったのだが、サッカーをしたいというだけで男装するリスクを犯してまで帝国に来るだろうか。俺だったらそんなことしたくない。でもサッカーというキーワードが出たら心が揺らぐものがあった。見つかったら相当やばい男装という大きなリスクを背負ってまでサッカーをしたいという思考。それには少し覚えがあった。雷門中の奴らだったら、多分どんなリスクを犯してまでサッカーをするだろう。それほどサッカーが好きなのだ。もしかして桃原も、雷門中の奴らのようにサッカー馬鹿なのだろうか。だから男装ができたのだろうか。俺がぐるぐるとめまぐるしく頭を働かせていると、「源田」ふと名前を呼ばれて反射的に振り返った。振り返ると腕を組んだ鬼道が立っていた。



「なんだ?」

「今日の練習時間は少し遅れるらしい。覚えておけ」

「そうか。了解だ。……あのさ、鬼道」

「なんだ?」

「…もしもの話なんだが」



鬼道にさえ言うのは抵抗があった。だが、相手は鬼道だということを考えれば多分心配はない、と思う。それに仮定の話だとすればさらに心配はなくなるはずだ。俺は口を開いた。



「もしも、帝国に男のフリした女子がいたらどうする?」



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