ロストガール | ナノ



やばい。私はいつもと違う時間割を見て冷や汗をかいた。今は水曜日の六時間目、いつもならこの時間は数学の時間なのだが、後ろの黒板を見て私は一瞬硬直した。数学と書き込まれているはずの時間割の枠には、あり得ないことに体育と書き込まれていたのだ。どうやら教師の都合で変更になったらしい。後ろから佐久間のやったーとか嬉しそうな声が聞こえる。私は全く嬉しくない。ていうかむしろ迷惑だ。変更なんて聞いてないから今日は下に体操着を着てきていない。どうしよう。私は少し考えて、保健室に行くことにした。なんなら部活がある放課後まで保健室にとどまっていればいい。鬼道もきっとフォローしてくれるだろうし、大丈夫。できるはずだ。私は鬼道に事を説明すると、教室を出ようとドアに手をかけた。鬼道には先生に上手く言い訳してくれるように頼んである。鬼道は先生に信用あるし、大丈夫だろう。すると私が教室を出ようとしているのを見た佐久間が声をかけてきた。



「桃原体育出ねぇの?」

「うん。ちょっと体調悪くて」「え、大丈夫なのか?」

「大したことない。多分部活も出れるよ」



私は佐久間にそう言うと「じゃあ」と教室を出た。佐久間は少し心配していたようだった。本当は体調なんか悪くないのだ。心配をかけてしまってちょっと悪い気がしたが、部活に出れば大丈夫だろうと思ってそんな思いを振り切った。





保健室を出ると、授業を終えた学校内の廊下はしーんとしていて、生徒一人いなかった。ぴんと張りつめた空気。私はそんな廊下を足音をたてながら歩いた。この静かな空間の中では、私の足音はかなり目立った。だが周りには人はいなく、私の目立つ足音は誰の耳には入らなかったようだ。私は更衣室に入ると、黙って一人で着替えを始めた。着替えをしながら、絶対辺見とかになんか言われるなあと、私は小さくため息をついた。私は今日は下に下着しか着てないしとにかく早く着替えてしまおうと決めて、制服を脱いだ。





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