ロストガール | ナノ
私は生まれてから一度も勉強会をしたことがない。いや、勉強会自体はしたことがあるのだ。それは私が女の子として生活していた時の話で、女友達と一緒に私の家で勉強会をしたのだが結局まともに勉強は進まず(皆そんなに頭良くなかったから当たり前だ)、ぐだくだになって終わったのだ。あれはお世辞にも勉強会とは言えないだろう。あれ以来私は勉強会というものをしたことがない。だが、この帝国学園に来てもう一度勉強会をすることになったとは思いもよらなかった。しかも男の家で。
「源田ん家?」
「源田の部屋なら結構広いし、いいんじゃね?俺は賛成」
「え?なに?佐久間も来んの?」
「悪いかよ。それともなに、二人っきりが良いのか?」
「そんなこと言ってないっての」
アホか!と佐久間を睨むと佐久間は携帯を取り出してカチカチといじり始めた。こいつ絶対頭悪い。私は佐久間を頭の中で頭の悪い奴カテゴリにいれてから、私の前に座っている源田に話しかけた。
「源田ん家どこ?」
「ローソンの近く。ほら、あの公園の近くのローソン」
「ああ、あそこね」
まだあまり土地勘というものがない私もわかるにぐらい近かった。なんだ、あそこの良く通るところじゃん。すると佐久間が楽しそうに口を開いた。
「なあ、賭けない?」
「は?なにを?」
「だからさ、三人のうちで一番点数高かった奴が誰か一人に命令出来るっていう。どうせ勉強するならそうする方が燃えるだろ?」
「ああ、なるほど」
確かに考えてみればそっちの方が良いかもしれない。命令されるのは少し怖いけど。私は佐久間に賛成した。
「うん、いーよ。源田も良いよな?」
「俺は別にどっちでも」
「お、やった」
「じゃあさあ、俺が買ったらアイス奢れよ」
「え、それって今言うもんなの?」
「まあどっちでも良くねぇ?桃原どうすんの?」
「えー…どうしよ」
別に何をしたいとかして欲しいとかは特にはない。アイス奢るのは…ちょっとレベルが低くすぎて燃えない気がする。私が悩んでいると、佐久間が信じられないことを口にした。
「俺今の取消するわ。やっぱり俺が勝ったら桃原と源田が手ぇ繋いで登校な」
「はああああ!?」
「はあ!!?」
いや意味がわからない。なんで私と源田が手繋いで登校なんてしなきゃいけないんだ。いくら何でも私は女で、源田は男。私だけだが一応少しは異性として意識はしている。しかも私は帝国では男であり、源田と手を繋いで歩いたりしたら完全にホモ疑惑がたつ。それはガチで嫌だ。
「いやいやいや意味わかんないから何でだよどっからそんな考え出てきたんだよ」
「見てるの楽しいじゃん」
「いやお前だけだし!!」
ニヤニヤしてる佐久間の頭を私はがつんと殴った。「いってー!!」色々と佐久間と話したが結局その話は通ってしまった(源田は何故かずっと机に突っ伏していた)。だがその代わり私が勝ったら佐久間が鬼道のゴーグルを取り、源田が鬼道の机の中にエロ本を入れることになった。鬼道が可哀想だが佐久間を懲らしめるために我慢してもらおう。あと、源田が勝ったら私がアイスを奢り、佐久間は鬼道の机に「妹命」と彫ることに(実はこれは私の案だ。机に書くのではなく彫るのがミソ)なっている。佐久間は私たちの案に一瞬泣きそうな顔をしていた。まあとりあえず、鬼道に謝りたい気分である事には間違いないだろう。