ロストガール | ナノ


「さっきは良くやったな。だいたい70点ぐらいか」



佐久間には上々だと言われたが、俺としては女々しい感じで終わってしまったから嬉しくない。せっかく桃原の隣に座って話せたっていうのに、なんであんな女々しいんだよ俺!もっと上手く話せよ俺!事はさかのぼること数分前、憧れの桃原の隣で食事が出来て内心スゲー喜んでいると、前に座る佐久間がこれでもかってぐらいに「話しかけろ!」という視線を送ってきた。それがもう、しつこいってなんの。佐久間の痛いほどの視線に、俺はしぶしぶ桃原に話しかけたのだ。あのまま桃原の隣で大人しく朝飯食べてればそれだけで幸せだったのに!



「だけど途中で桃原に遊ばれたのは残念だったな。あれでマイナス10点」

「……じゃあ後の20点は?」

「気づけよ馬鹿。桃原と鬼道が仲良さそうに話してたろ。あれは痛かったなー。マイナス20点」

「鬼道と!?」



それは心外だった。まさかあの鬼道と桃原が仲良さそうに話してたなんて!桃原の隣に座って有頂天になっていたから気づかなかった。うわ、なんかスゲー先越された気分だ!



「まあ安心しろよ。鬼道はホモじゃないから」

「……………」



なんか言い方ムカついて悔しいんだが反論できない。ホモってそんなストレートに言うなよ!キモいイメージつくだろ!BLとかにして言えよ!「キモいのは同じだろ」あ、やべ、声に出てた!



「あ、そういえばさ、なんか鬼道の様子がおかしいんだよな。源田なんか知ってる?」

「鬼道の様子が?」

「なーんかさ、動揺してるっていうか。そわそわしてるっていうか」

「動揺って何にだ?」

「それがわかったら苦労してない」



鬼道が動揺しているなんて。鬼道は気持ちが揺らぐなんてことないような芯のしっかりした奴だ。その鬼道が動揺しているなんてよほどのことじゃないとあり得ない。一体鬼道に何があったのだろうか。その後、佐久間が鬼道に聞いてみたのだが「別に何もない」と言われてしまった。佐久間は「絶対何かある」と確信したようにあばいてやる!とか言っていた。俺はそこまでして知ろうとは思わなかったが。





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