ロストガール | ナノ
「桃原先輩、総師から連絡来てますよ」
部屋で風呂をどうしようか悩んでいると、成神がやってきた。総師から連絡が来たそうで。これで風呂を後に回す口実が出来た。私は内心でほっとしながら「わかった」と告げた。
「それにしてもドンマイですね。風呂入る寸前で呼び出されるなんて」
「まあ、総師からの連絡だし仕方ないさ」
「そうですね。じゃあ俺らは先に入りますんで」
そう言って成神は風呂に入りに行った。するとすぐ、バッグからバイブ音が聞こえたのでバッグから携帯を取り出して見ると、総師からメールが来ていた。これからも同じ手を使え、とのことだ。毎回同じ手を使ったりしたらみんなに怪しまれないかという不安があったが、今贅沢は言っていられない。今のうちに荷物の整理しとこうか、と思って荷物をあさっているとこんこん、と部屋のドアがノックされる音がした。
「開けるぞー」
聞き慣れた声と共にドアが開いた。現れたのは佐久間と源田で、風呂に入るようで手にバスタオルやらを持っている。
「入んねえの?風呂」
「ああ、なんか総師に連絡とるように言われたから後で入るよ」
「はっ!?マジで!?」
佐久間はうわードンマイとか言うと源田に何かごそごそと呟き、源田は佐久間の呟きに「うっ」と顔をひきつらせた。何を言ったのだろうか。私が首をかしげていると佐久間は「残念だな〜源田」とか源田に言うと行ってしまった(源田が何故か慌てていた)。
「じゃ、じゃあな」
「あ、うん」
源田は言うと佐久間の後に続いて行った。なんか不自然だったような。私はまあいいか、と荷物整理を再開した。数十分後、佐久間達が風呂からあがってきた。私は全員あがったのを確認してから入れ違うようにして風呂に入った。服を脱ぎ、裸になって浴室のドアをがらりと開けるとモワァッと生暖かい湯気が私の体をくすぐった。そしたら身体中の疲労感が消えるような気がして、私は(ああ、ようやく汗が流せる)とほっとした心持ちで浴室に足を踏み入れた。
……今思えば警戒心が足りなかったのだ。脱水所にカギかわざわざあったのにも関わらず、何故掛けなかったのか。完全に油断していた。私は誰かが脱水所のドアを開ける音に、残念ながら私は、気づかなかったのだ。