ロストガール | ナノ



スカートなんて久しぶりにはいた。ミニとまではいかないが、それでも短い方にはいるスカート。私はそれをはいて友達を待っていた。男装中の私が何故こんな格好をしているかと言うと、実は小学生時代の友達に会うためだ。もちろんその友達は女としての私を知っていて、私が男装してるなんて知ってる訳がない。そのため私は知り合いに会ってもそう易々とバレない格好、つまり女の子の格好をしていた。スカートはそのためだ。それにしても遅いなあ、と携帯を開いた。待ち合わせ時間は過ぎている。もう来てもおかしくはないのだが。考えていると、唐突に名前を呼ばれた。


「未来!」


声がした方を向くと今まさに考えていた友達、円堂守がいた。その隣にはポニーテールの男の子がいて、私を見るとにこりと微笑んだ。多分、彼が風丸くんだろう。



「久しぶり。元気でやってた?」

「おう!未来も元気そうで良かったぜ。ああ、後こいつが前に紹介した風丸な」

「風丸一朗太だ。よろしく」

「よろしく。桃原未来だ」

「なあなあ、はやくサッカーしようぜ!」



見ると円堂は早くサッカーしたいという様子で目をきらきらさせていた。どうやら彼にはサッカーをしたいという気持ちしかないらしい。私はくすくすと笑うと、いいよと円堂からボールを受け取った。すると風丸くんが気をきかせて聞いてきてくれた。



「でも桃原さん、スカートじゃないか。大丈夫か?」

「ああ大丈夫。下に短パンはいてるから」



私が言うと、風丸くんは面食らったような顔をした。円堂は変わってないなあ、と笑っている。



「それよりさあ、はやくサッカーしようよ」



私の言葉に円堂は大きく頷いて「風丸!はやく!」走りだしてしまった。風丸くんもようやくはっとして駆け出した。私は風丸くんが位置につくのを待ってから、早く早くと叫んでる円堂に向かってボールをパスした。すると円堂は嬉しそうにボールを蹴って走り出し、風丸くんも私もそれに続いた。走りながら、久しぶりだなと実感した。
本当に久しぶりだ。円堂とこうやって、ボールを蹴りあうのは。





「あーっ!疲れた!けど楽しかった!」

「それ同感!」

「あー喉乾いた!」



三人でベンチに座りこんで息をつく。三人とも完全に息があがっていた。でも私は前よりは体力がついたし、そこまで疲れなかった。さすがに息はあがるけど。



「未来さあ、前よりも体力ついたよな。上手くもなったし」

「え?本当?」

「すっげー上手くなった。風丸から見ても上手いと思うだろ?」

「会ってないから上手くなったかはわからないけどさ、上手いとは思う」



やっぱりな、と円堂は笑って親指を立てた。どうやら私の帝国での努力はちゃんと発揮されているらしい。私はふっと笑うと、安堵のため息をついた。良かった。帝国に来て、良かった。女として前の学校にとどまっていたら、絶対こんな風に強くなんてなれてなかった。私が息を整えながらそんなことを思っていると、円堂が「あ!」と叫んだ。



「あれ、鬼道じゃないか?」



……本気で逃げ出したくなった。



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