ロストガール | ナノ



授業が終わり、掃除も終えて部活に出ようといつもの通りに準備をした。今日は体育があったから、密かにトイレで制服の下にユニフォームを制服の下に着込むとトイレを出た。この帝国学園に男装してもう二週間が経つが、未だにこの部室の準備には慣れない。あんまり遅いと鬼道に怒られてしまうから、早いとこ校庭に出ようと廊下を歩いていたら、ふと後ろから声をかけられたのだ。



「桃原くんっ」



振り向くと、そこには見覚えのある女の子がいた。確か同じクラスの子だ。見れば手になにか紙のようなものが握られている。いったい何の用だろうか?



「あの…これ」

「え、あ、はい」



女の子は私に持っていた紙を押しつけるように渡すと、びゅんと効果音の出るような速さで教室に逃げて行った。教室にはその女の子の友達が何人かいたようで、きゃーきゃーと黄色い声が聞こえている。私はしばらくぽかんとした後、部活に向かって歩きながら女の子に渡された紙を開いた。それは手紙のようで、開くと信じられないことが書いてあった。



〈桃原くんが、好きです〉



小さな丸い文字でそう書いてあった。これは多分、いわゆる、ラブレターというやつだ。こんなものをもらったのは生まれて初めて、しかも男としてもらったのも初めてだ。悪い気はしないが、なんだかいたたまれない気持ちだ。まわりがなんて思おうが、自分はれっきとした女だ。なのでラブレターなんぞを男としてもらっても、その子気持ちに答えられる訳がない。しかもなんだか騙してるような気分で、罪悪感があった。嫌だな、なんか。私が手紙を片手に持って廊下に立ち尽くしていると、前の方から声が聞こえた。



「モテるなあ」



見ると、いつの間にか前にニヤニヤとした佐久間がいた。しまった、見られた。その後、私は佐久間によってバラされた噂により(彼女が出来たとかいうクソ迷惑な噂だ)何日も迷惑し、女子に話を聞いた直後に佐久間のところにダッシュして佐久間のみぞおちにストレートパンチをかましてやった。佐久間のバカヤロー!





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