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見慣れた駅で聞き慣れたざわめき声を聞いていると、聞き慣れたアナウンスが流れた。



「三番線来ます。黄色い線の内側でお待ち下さい」



私が聞き慣れたアナウンスを聞いていると、誰かに肩をぽん、と軽くたたかれた。



「あ、おはよう鬼道」

「ああ。おはよう」



いつもの朝の挨拶を交わすと鬼道は私の隣に立った。つかず離れずじゃない。普通に話す時の自然な距離で。鬼道と初めて話したあの日からもう一週間が経っていた。あの鬼道の問いかけにはもちろんイエスと答えて、今に至る。残念ながら私の家と鬼道の家は逆方向なので駅で待ち合わせをして一緒に学校に行っている。とは言っても学校は違うし、降りる駅も違うからそんなに一緒にいられないんだけど。…あれ?なんかこれ付き合ってるみたいじゃないか。うわわ。自分で考えたくせに自分ですごくドキドキした。すると「おい鬼道、」向こうの方から鬼道の名前を呼ぶ声が。あれ、この声は。声のした方を見ると、そこにはいつか会った確か源田とかいう名前の人と、眼帯をした知らない男の子がいた。



「源田に……佐久間?お前なんでいるんだ?お前の家はこの駅から遠いだろう」



佐久間?どこかで聞いたことある名前だ。確か源田と鬼道がFWかDFかで悩んでた人だ。どうやら彼がその佐久間らしい。佐久間(仮)は鬼道の問いに笑って答えた。




「あぁ、昨日源田ん家泊まったんだよ」

「そうか。…というか佐久間、お前こんな時間に起きれるのか?お前いつも遅刻ギリギリに来るくせに……まさかオールしたのか?」

「し、してない!」



佐久間はあれこれ言い訳をしていたが鬼道の質問攻めにとうとう折れてオールを認めた。話を聞くとオールしたのは佐久間だけで源田の方はきっちり寝たようだ。佐久間は「寝不足はサッカーに支障をきたすからやめろと言ったろう」と鬼道に怒られていた。佐久間はばつの悪そうな顔で謝るとそれよりさー、と私の方を見て言った。



「この子だれ?もしかして鬼道の彼女?」

「かのっ…!?」



かかか彼女って佐久間!確かに一緒に学校行ってるし彼女っぽいかもしれないけどそれは私の妄想であって決して事実ではなくて「ああそうだ」…って鬼道おおお!なに言ってんのあんた!この発言には私だけじゃなく源田と佐久間も驚いていた。佐久間は「彼女いるなんて聞いてねーぞ」なんて言って源田は「いつから…!」とか言ってる。私はあまりのことにしばらく何も言えないでいたがすぐにはっとして鬼道に責めいった。



「ちょ、鬼道なに言っちゃってんの。頭平気?」

「頭は正常だ。それに俺達は付き合ってる。そうだよな未来」



だな?と聞かれて頷くしか私には術がなかった。だって鬼道の顔怖いし…!もはや脅迫に近い。それに鬼道、今私のこと名前で呼んだ気がするんだけど気のせいだろうか。



「い、いつからだ鬼道?」



源田が聞いてきた。これは後から聞いたのだが鬼道はずっと前から私のことを知っていて、名前も知っていたらしい。源田はその事を知っていて、良く相談されてたらしいのだが、どうも付き合ってるというのは初耳らさい。当たり前だ。私だって今決められたんだから。慌てた様子の源田に鬼道は口元を吊り上げて不敵に笑うと、こう言い放った。




「30秒前からだ」




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