モノクロ | ナノ



「あんた本当に鬼道有人のこと好きだよね」



昼休み、食事中に友達に言われて、私は顔をあげた。この友達は私と鬼道の出会いから今朝の話まで全て知ってる。私はこの友達に良く相談する。いわば彼女は私の相談役だ。



「うん好きだよ。超かっこいいもん」

「ふーん。…あ、ねぇ、鬼道有人に惚れたっていつだっけ?」

「あー、多分一週間前かな」



一週間前。私が鬼道に惚れた日だ。一週間ちょっと前、私は最愛の彼氏にフラれた。私は嫌で嫌で別れたくなかったけど、もし私が別れたくないと泣きついて嫌われたら嫌だったから、泣く泣く別れた。夜中ずっと泣いて、良く寝られなくて少し早めに登校して電車に乗ったら鬼道に会った。鬼道とは話もしなかったし、目も合わなかったけど私はいつの間にか鬼道が好きになっていた。理由はわからない。ただ鬼道を見てたらすごく惹かれた。それだけだ。鬼道くんを好きになったら不思議なことに私の胸に刻まれた悲しみは鬼道への思いで埋まった。元彼への思い、悲しみと痛みは消えたのだ。だけどそれと引き替えに、胸をつつくような苦しみが私を襲った。何度も経験した事がある。これは片思いだ。どうもこれは胸を焼き尽くすような片思いな恋のようだった。でも私は鬼道が好き。それだけだ。ただ問題がひとつあった。鬼道が私のことを知らなくて、接点が全くないということだ。それはつまり思いを伝えるなんてできないと言う事で。チキン・オブ・ハートの私なんかが接点のない人に告白なんか出来る訳がないのである。だけどその問題も今はもう解決しそうだ。私はずっと、この思いが焼き尽くすまで片思いで済ませるつもりだから。それでいいんだ。だって知らない人に告白なんかされたら鬼道だって迷惑だろうし、私は朝に鬼道に会うだけですごく幸せだから。私が語り終えると友達は頬杖をつきながら、笑って言った。




「本当、鬼道有人が大好きだね」




- ナノ -