豪炎寺小説 | ナノ



俺は今深く深く後悔していた。何故何も策を考えずにあんな行動に出てしまったのだろう。考えるたびに胸が沈む。とりあえず、とりあえず今は仲を取り繕って桃原に謝ろうと思い、桃原に話しかけようとした。だが学校で桃原と会ったが無視され、話しかけるタイミングをなくして話しかけられなかった。その後何回も話しかけようとはしたのだが、桃原が何人もの女子の輪に入って行ってしまったので無理だった。あんなタイミングで話しかけられるような奴がいたらそいつを勇者と呼んでもいい。なので仕方なく今日は諦めることにして、放課後に円堂がいつも練習している夕日の見える場所に行った。一人で考えたかった。ベンチに座り込み、バッグを隣に置く。一息ついてから前を向くと、まっすぐこっちを向いた夕日と目が合った。俺はこの夕日を見るのが好きだった。町はこの夕日に照らされてきらきらと輝き、俺の心を照らしてくれているようでとても落ち着いた。俺は夕日をぼんやりと見ながら桃原のことを考えた。何故あんなことをしてしまったのか今一度考えてみる。考えてみれば理由は単純、桃原が、好きだからだ。それで全部理由がついてしまうのだから、多分、俺は相当惚れ込んでいるのだろう。好き、好きなんだ。いやそんな言葉じゃこの気持ちは表せないだろう。そっと自分の唇に触れてみる。この唇が、桃原の唇と触れたのだ。するとどきりと胸が高鳴った。ああ、そうだ。俺は、桃原を愛しているんだ。桃原を考えるたびに胸が高鳴り、桃原を思うたびに心が温かくなる。好き、好きなんだ。妹や友達に向ける気持ちとは違う愛情。確信した。俺は桃原に恋をして、「あっ、」背後から声が聞こえた。誰だろう、と振り向くと「…はっ?」思わずすっとんきょうな声が出た。唖然として俺の後ろに立っているのは、紛れもない、桃原未来だった。


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