豪炎寺小説 | ナノ



私は少女漫画は読むか読まないかと言われたら読まない方だ。というかそれ以前に漫画自体あまり読まない。私は読むのは大概がジャンルを問わない小説で、それでも恋愛小説も読まない方の人間だ。だけどそんな私でも知ってるような小説漫画でありきたりのパターンが訪れた。学校に登校して自分の下駄箱を開けるとひらりと落ちる一枚の紙。拾い上げてみるとそれは手紙だった。しかもご丁寧にも手紙にハートマークの赤いシールが貼ってあって、みてくれは完全なるラブレターだった。まさか私に来るわけないよとラブレターではないと証明するために手紙を開けて中身を読んでみたのだが、正真正銘、それがラブレターだとわかってしまい、ラブレターではないと証明するはずがラブレターだと証明してしまった訳だが。



「…どうした?」

「あっ、いや何でもない」



紙を手にしたまま固まってしまった私を不審がったのか、守が話しかけてきたが私は手紙をポケットに突っ込んで慌てて手を振った。何でもないと主張する私に守はそっか、とそれだけ言った。良かった。深く聞いて来なくて。
授業中、私はひっそりと手紙を再度開いみた。よくよくみると差出人は不明で、またパターンにも昼休みに体育館裏に来て欲しいとあった。すごい。こんなことするひと本当にいるんだ。



「桃原?」

「えっ、なに?」



呼ばれて振り向くと豪炎寺がいた。気がついたら授業はもう終わっていて、みんな給食の準備をしていた。ていうか給食ってもう昼休み間近じゃん!私がやばい、と顔を青くして焦っていると、それに気づいたのか豪炎寺が聞いてきた。



「さっきから顔色が悪い。なにかあったのか?」

「いや、別に何も」

「そうには見えないが」

「や、ほんと何もないよ。大丈夫だって」

「…そうか?」

「うん。大丈夫(多分)」

「なら、いいけどな」



豪炎寺はそれだけ言って自分の席についた。豪炎寺優しいな。回りに守以外の特に優しい人がいないせいか、最近私は豪炎寺を特別扱いしまくっている。例えば染岡とかにケーキ持って来い!とか言われても私は誰が持って来るかァァァと言い返すだろうけど、豪炎寺にケーキ持って来いと言われたらダッシュで持ってくる。だって豪炎寺は良い奴だから。残念だな、日頃の行いってやつだよ染岡!私が勝手に染岡に日頃の行いが悪い可哀想な奴とレッテルを貼っていると丁度頭に浮かんでいた染岡が私に話しかけてきた(忌まわしくもコイツは私の隣の席なのだ)。



「未来、ミカンくれよ」

「誰がやるか」

「優しくねぇな」

「これが普通です」

「豪炎寺はくれたぜ」

「ちょっと豪炎寺ィィィ」



こんなのにあげなくたっていいのに!豪炎寺!



「じゃあ私にもくれ」

「あぁ?なんでそうなるんだよ」

「豪炎寺の優しさはみんなで分け合うものだから」

「おかしいだろ。とにかくこれは俺がもらったんだからな。やらねえ」

「豪炎寺の優しさにつけこんだくせにずるい」



私たちがぎゃあぎゃあと喧嘩していると先生に怒られてしまい、結局ミカンは豪炎寺の元に帰ってしまった(残念だ)。そしてついに、ついにこの時が来てしまった。給食の時間はあっという間に過ぎてしまい、昼休みになった。正直嫌だ。告られること自体が嫌なのではなく、告られる時のその……気まずい時間?というのが嫌だ。つまりは緊張が嫌いな訳だが。かといって逃げる訳にはいかない。本気にしてたら悪いし。大体人を待たせるのは気分が悪い。私は時間はちゃんとするタイプの人間だから。という訳で逃げ出さずに体育館裏に来たは来たが、そこには誰もいなかった。まだ来ていないようだ。まだ心の準備が出来てなかった私はほっとしたが、次の瞬間、体育館の影から現れた人に私は目を疑った。



「…え?」



ピンク色の頭に少し大きめの長身体躯の、私が良く知る人。

私の隣の、席の人。



「よォ」



染岡は気にもした風もなく、いつもと変わらない挨拶をした。



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