シークレット・エンド | ナノ
「イオン様は私の後ろへ。皆さんカバーをお願いします!」
「わかりました!」
「行くぞ、ルーク!」
「お、おう」


ガイがルークに声をかける時にはもう俺はサーベルで敵を攻撃していた。一番前にいた奴の脚を素早く切りつける。そいつが怯んだ隙をみて足を薙ぎ払った。そいつはしたたかに身体を地面に激突した。鎧を着ているから余計に衝撃が強いし、すぐに起きれないだろう。俺はサーベルを持ち直すとそいつの肩あたりにサーベルを突き刺した。途端に悲鳴をあげるそいつ。俺はサーベルを抜き、もがくそいつの武器を蹴って届かないところへ飛ばすと、そいつの頭を思い切り蹴った。すると悲鳴は途切れ、ぴたりと動かなくなった。殺してはいない。気絶させたのだ。だが気がついても脚は切ったし肩は切ったし、武器もないからそんなに危険性はないだろう。ま、こいつが気がつく頃には俺らはもういないだろうけど。すると俺にすっと影が差した。俺はほとんど勘で右に避けた。咄嗟に振り向くとさっきまで俺が立っていたところにバトルアックスが突き刺さっていた。危なかった。あと少し遅かったらあのバトルアックスの餌食になっていた。そいつは俺が避けるとは思わなかったらしく慌ててバトルアックスを抜こうと必死になっている。だが力いっぱい振り下ろして地面に突き刺さったバトルアックスを引き抜くのは至難の技だ。俺はサーベルをさっき避けた時に放り出してしまったので、太股に差してあるマンゴーシュを抜くのと同時に身体ごと振り向き、マンゴーシュで敵の首を裂いた。今度は悲鳴も聞こえない。代わりに血がぶしゅっと吹き出て顔にかかった。予想していたので目に血はかからなかった。悪いが不意打ちだったので殺さずは出来なかった。ゆっくりと喉を裂かれたそいつは倒れた。がしゃんと鎧と地面の重なる音がした。俺は顔の血を手で拭きながら周りを見た。もうほとんど敵は残っていない。ひとりだけ尻餅をついている奴が残ってはいるが、もうルークが剣を振り下ろすところだったから助けは要らないだろう。そう思っていたが、ルークはなかなか剣を振り下ろそうとしなかった。振り下ろすはずの剣先が震えている。まさかルーク、人を殺した事がないのか?そう察知した瞬間、身体が勝手にルークのところへと駆け出していた。敵はルークの隙を見逃さない。彼の剣を振り飛ばし、ルークに刃を向けようとしていた。それを庇おうとティアが間に入る。間に合え――!だが俺の願いも虚しく間に合いそうにはなかった。するとすっと目の前に金髪が現れ、敵の背に剣を刺した。ガイだ。だがやはり間に合わなかった。ティアが敵の剣に切り付けられた!


「ティア!」


ガイを押しのけて倒れたティアを慌てて抱き起こす。彼女は閉じていた目を開けると、俺の顔を見て少し驚いたように目を見開いた。だがそのあとすぐに朧げな目になった。そして一言。


「ばか…」


ルークに向けてであろうその言葉は独り言のように呟かれた。
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