シークレット・エンド | ナノ
俺達の登場により状況は逆転し、敵たちをタルタロスの中に閉じ込めた。しばらくは出てこられないらしい。音機械はいまいちよくわからない造りだ。敵たちがタルタロスで足止めを食ってる間に俺達はトンズラしようと言う話になり、今はタルタロスからずいぶん離れたところにいた。俺としてはさっさとジェイド・カーティスにブツを渡してこんな物騒な用件から抜け出したいが、今は敵のことがあるから逃げることに専念することにした。
それにしても驚いたのはローレライ教団の導師イオンがいたことだ。話には聞いていたがまさか本人に会えるとは。今の面子はジェイド・カーティス、導師イオン、長い茶髪の少女、ガイの主人だというルーク、ガイと俺だ。そういえばあの胸の大きな少女だけ名前を知らないことに気づいた。歩きながらちらりと横顔を覗いて見たが前髪で表情は伺えなかった。
しばらくして導師イオンが力尽き、もう敵も追って来ないだろうと木陰で休むことになった。俺達はさっそく状況把握を始める。どうやらこれはかなり国が動くぐらい規模の大きい話らしかった。平和条約を結びたいので遣いを寄越したマルクトの王に戦争を始めたい大詠師モース。さっきの争いは中立の立場であるイオンが軟禁された云々の大詠師モースとのいざこざだったらしい。そしてルークはたまたま会ったジェイド・カーティスに、バチカルの王様との橋渡しをするために連れた来られたらしい。そしてそれぞれの自己紹介が始まった。ガイがジェイドカーティスに何者か聞かれ、答える。すると予想通り彼は俺にも同じ質問を投げかけて来たので、俺はジェイドカーティス宛ての手紙を懐から出した。


「テオだ。あんたはジェイド・カーティス…であってるよな?」
「ええそうですか。何故私の名前を?」
「これを。あんた宛てに預かってきた」


俺は手紙をジェイド・カーティスに差し出す。彼は受け取るとさっそく開けて中身を読みはじめた。しばらくするとハハンと鼻を鳴らした。そして俺を見つめた。


「な、なんだ」
「いやあ、この手紙をくれたのはちょっとした知り合いなんですがねぇ。もしかしてあなた、依頼主とは仲が良いですか?」
「や、顔とかは見たことはない。直接面識はなくて、手紙だけでやり取りしてる依頼人だ。まあ依頼はそこそこもらってるし、わりと俺の上客ではある」
「なるほど…」


ジェイドは少し考える仕草をして、開いた手紙の中にあった紙を差し出してきた。


「これはあなた宛てだそうです」
「俺に?」


紙を受け取り、見ると文字があったので読んでみる。読んでるうちにぎょっとして思わず手紙を思い切り握ってしまってシワがついた。


「な、なんだよそれ…」
「なあなあ、なんて書いてあったんだ?」


さっきから話を聞いてきたルークが気になってしょうがないらしく手紙を覗いてきた。俺はジェイドを見た。特になにも言わずに、にこにこと笑っている。俺はため息をついた。


「結局、俺はあんたにマルクトまでついて行けと?」
「そういうことですねぇ」
「な、なんなんだよ」


俺の手紙を取って読んでいたルークにガイも参戦する。ルークとガイが小さく声をあげた。
手紙にはこう書いてあった。

“親愛なる我が友へ”
こうやって手紙を送るのは久しぶりだな。
まあ今回は俺の依頼を受けてくれてありがとう。さて、今回の依頼はジェイドにこの手紙を渡すことだが、本当の依頼は別にあるんだ。
テオはどうかわからないが、俺はテオに信用を置いているつもりだ。で、まあこれが本当の依頼なんだが、ジェイドはキムラスカに平和条約締結提案の親書を渡しに行っているんだが、それの護衛について欲しいんだ。あ、依頼料は弾むぜ?
それでこっちがぶっちゃけ本命なんだが、ジェイドが親書を届け終わったら俺のところまで来てくれ。前から会ってみたいって、俺もお前も言ってたろ?だからサプライズだ。今回の依頼はジェイドの護衛と俺に会いに行く。このふたつだ。じゃ、任せたぜ。
P.S. ついでに本名を明かしておく。お前の驚く顔が見れないのは残念だけど、まあ想像だけで我慢しておく。また今度ブウザギ捜索、頼むぜ?
 マルクト帝国現皇帝 ピオニー・ウパラ・マルクト九世より


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