シークレット・エンド | ナノ
陸上装甲艦タルタロス。マルクト自慢のこの陸上装甲艦だ。俺は今までこれを追いかけていた訳だが、ようやく追いついて目の前にあるタルタロスは、高さは裕に10mを超えている大地をドドドドとド迫力で突っ走っている。大地の砂を巻き上げ、土煙になったものが俺の目に入りそうになり、慌てて顔を伏せる。
目的の死霊使いジェイド・カーティスはこの中にいるのだろうか。するとちょうど良くタルタロスが止まったのでガイと共にタルタロスを見上げた。どうやって入り込もうか。そうガイに聞こうとガイの方を向いたが、「えっ?」ガイは既に隣にはいなかった。慌てて前を向くと、彼はタルタロスに向かって走り出していた。


「ええっおい!待て!」


待てってば!叫んだがガイは目を輝かせていて俺の言葉には耳も貸さない様子だ。俺は舌打ちしてガイを追いかける。ガイはもうタルタロスのすぐ近くまで行っていて、素早く外壁(梯があった)を登り始めた。俺は後を必死で追うが、ガイはひょいひょい身軽にタルタロスを登っている。俺は上にいるガイに必死に声をかける。


「おい!ガイ!待てよ!」
「陸上装甲艦タルタロスだぞ!待てるか!」


どうやらガイが興奮しだしたのはご主人様に会えるとかの気持ちじゃないらしい。どうやらこういう音機械オタクらしくすっかりはまってくれちゃってる。俺は必死に追いかけ、ガイと共にタルタロスに降り立った。


「あれ?誰もいないじゃないか」
「そうだな…」


ガイはすっかりタルタロスに魅入られている。俺はため息をつくと、辺りを捜索する。周りには魔物の死体がいくつかあった。血がついたロングソードやダガーがなんやらもいくつか落ちている。どうやら魔物との争いがあったらしい。
それにしても人間が見当たらない。いた形跡はあるのにどうしてだろうか。俺はきょろきょろと辺りを見回し、ふとタルタロスの下が目に入った。
地上に、いくつかの人達がいた。金髪の女に赤毛の少年、少女やらエトセトラ。目を凝らすとジェイド・カーティスもいた。俺は目を細めた。多分、状況から見るにあれはジェイド・カーティスたちがピンチっぽい。俺は振り向くとタルタロスをベタベタと触るのに夢中のガイを引っぺがした。


「なにすんだよっ。もうちょっとくらいいいだろ」
「いいからガイっ!あの中にルークだっけか?いないのか!?」
「えっ?…ああっ、ルーク!」


いたんだじゃねーか!俺はガイを罵ると、行くぞ!と声をかけた。まだ名残惜しげにタルタロスを見つめるガイをバシッと叩き、タルタロスの下に落とそうとしたがさすがにやめてくれと言われた。ガイはタルタロスの端に手をかけるとよっと一言。タルタロスから地上へ飛び降りた。少しタイミングがズレたが、狙いを定めて俺も一緒に飛び降りる。
敵らしい兵士の前に飛び降りる。中年の兵士はぎょっとした顔をした。俺はにやっと笑うと兵士の鎧の隙間を見つけてレイピアを刺した。兵士が叫び声をあげる。急所は外したから生きてるはずだ。レイピアを抜いて振り向くとガイが金髪の女性から緑の髪の少年を庇っていた。ジェイド・カーティスはまだ幼い少女に槍を向けて制し、ガイが兵士の武器を蹴り飛ばしていた。そしてフフンと一言。


「ガイ様華麗に参上!」


…さっきまでタルタロスラブ!してた奴から出る言葉とは思えない。俺ははあとため息をついた。
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