夏目 | ナノ
授業が一段落し、ざわざわと皆がざわつき始める昼休み。俺は塔子さん手作りのお弁当と、自販機で買ったお茶を鞄から取り出した。お茶はホットで、教室に暖房がついていたおかげでまだ温かい。俺は温かいお茶で冷えた両手を温めた。冷え性の俺にこれはありがたい。すると西村が俺のお弁当を見て声をあげた。


「あーあ、いいよなあ夏目は。いつも手作り弁当で」
「そういう西村も弁当じゃないか」
「俺は自分で作ったんだよ。しかも冷食」


ぶーたれて文句を言う西村に、俺は苦笑してお茶を飲んだ。するとふと気配を感じて窓を見ると、少し離れた木の上にいた黒い犬と目が合った。俺はびっくりしてお茶を吹きそうになって、慌てて飲み込んだ。今吹いたら西村の顔面に直撃する。この前同じようなパターンで制服を汚させてしまったのでそれだけは避けなければいけない。慌てて飲み込んだせいでお茶が肺に入ってしまったようで大きく咳き込んだ。「だっ大丈夫か?」西村が心配して俺の背中を叩く。しばらくしてから俺の咳は収まったが、窓から見える木を見ても、さっきいた黒い犬はいなかった。
- ナノ -