小説 | ナノ



未来から俺の家に泊まりに来たいと連絡があった。最初は驚いたものだ。親は今日明日明後日と続いて家にいないので可能なことは可能だが、でも驚いた。キスひとつで散々恥ずかしいからと拒否る奴がまさか泊まりに来たいなんて。俺は散々歓喜したり焦ったり驚いたりした後、未来を家に招いた。未来は俺の家に来るのは初めてではないが泊まるなんてそれこそ初めてなので最初未来自身も緊張していたが、親がいないのもあってすぐに緊張はとれた。
俺の家には二段ベッド(俺が中学に入ってから上の段は使っていなかったので片付けが大変だった)があったのでそれで寝ることにした。じゃんけんで俺が下、未来が上になった。
やがて夜の10時になって、そろそろ寝ることにした(未来はゲームのコントローラを名残惜しそうに掴んでいたが俺が半ば強制的に引き剥がすとしぶしぶ引き下がった)。
着替えをすまして(見ようとしていたら未来に見るなと髪を引っ張られた)電気を消した。ベッドに潜り込むと上の段から「おやすみー」と声が聞こえたのでこちらからもおやすみと声をかけておいた。何時間か経ち、俺がうとうとしていると、どさっとベッドに何かが潜り込んできた。「わっ」なんなんだと思ってシーツを引き剥がす。するとベッドの侵入者と目がばっちり合い、



「っ、未来!?」

「こ、こんばんは」



見つかっちゃった、と言うような顔で未来が俺のベッドの中にいた。
なんでいるのか、と聞こうとするがあまりの驚きで言葉がつっかえて出てこない。



「っ、なっ、ななななっ…!」

「えーと、一緒に寝ていい?」

「っ、」



なんだろうか今日は。今日は良いことが有りすぎだ。人生ってこんなにあっさり幸運がやってくるものなのだろうか。
俺は一度自分を落ち着かせてから、もう一度聞いた。



「な、なんでここにいるんだ」

「……さ、寂しかった…とか…」



だ、駄目?と聞いてきた未来。駄目じゃない。むしろ歓迎する。だがそれには少々問題がある。あれだ、未来と一緒に寝たりして俺の理性がもつか、わからないのだ。
ここで未来を襲ったりなんかしたら一生後悔する。だから俺は二段ベッドにしたのに。



「あ、あのな未来、」

「なに?」

「俺、男だぞ」

「知ってる」

「……俺が未来を、襲ったりするかもしれない。それも全部ひっくるめて、一緒に寝るのか?」

「…うん」

「いいのか」

「うん」

「本当にか?」

「うん」



どうやら未来は本気なようだ。仕方ない。とりあえず頑張って理性を保とう。
俺は未来に背を向けてごろりと寝転がり、「寝るなら寝ろ」と呟いた。少しの間の後、未来がごそごそとベッドの中に入ってくる気配を感じた。しばらくすると規則性のある未来の寝息が聞こえてきた。
…その後、俺を抱き締めてきた未来の手に理性が保つか本気で悩んだ。



メロウガール



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