小説 | ナノ
「影宮!」
影宮の部屋に向かって名前を叫んでから数秒、返事はない。返って来るのは無言。あれおかしいなさっきまでいたのに。戸を開けようと手をのばしたら、がらりと戸が開いた。
「わっ」
「なんだ、未来かよ」
なんだとはなんだとむっとして顔を上げたら、色んな事でびっくりしてしまった。第一にあの影宮が、髪の毛を下ろしていたから。初めて見た。髪を下ろした影宮はさらに女の子らしさが増していて。これで初対面だったら絶対女の子だと勘違いするな。ついでに影宮の目の下には少々隈があったけど、それよりもそれよりもそれよりもそれよりも、私には、もっと驚くことが。
「ぎゃああああ露出狂!セクハラ!」
「ろっ、露出狂ってなんだよ!お前が呼んだんだろ!」
ボタン全開でしかも着崩した状態、つまりは上半身ほぼ裸で現れた影宮に私は目をひんむいた。影宮の馬鹿、変態。なんでこんな格好で女の子の前に出てくるんだ。
「うわあああ変態セクハラ露出魔」
「ああわかった、わかったよ!着れば良いんだろ着れば!」
影宮は着崩していた服をボタンを締めてきちっと着ると「ほら着たぞ」と顔を伏せていた私の頭をごつんと叩いた(女の子に拳でごつんとかコイツ後で殴る)。
私が顔を上げるといつの間にか髪の毛が結い上げられていた。あ、ちくしょ、写メっとけば良かった。
「で?」
「え?」
「なんだよ?何か用があって来たんだろ」
「あ、そうだ。えーと、朝ごはん出来たから来いって…」
「あー、今行く」
影宮はめんどくさそうに返事をすると、「おら行くぞ」と再び私の頭をごつん(後で殴る)。影宮の馬鹿。皿にニンジン移してやるからな。
「痛いんだけど露出魔」
「誰が露出魔だ!」
ぎゃあぎゃあうるさい影宮を殴り倒す計画(夜行なので殴り倒すぐらい本気でやる)を企てていたら、「未来ちゃん!閃ちゃん!」前から秀くんが来たので影宮の露出魔事件の話をしたら頭をグサッとやられた。絶対殴り倒すからな露出魔!
あたり前な日常
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