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「お兄さん、誰?」



話しかけられてギクリとした。振り向くと黒髪の女の子がいて、不思議そうな顔でこっちを見ている。見つかっちまった。でもまあ、サイクス辺りにバレなきゃいいんだけどさ。でもバレたらまずいし一応とんずらしとくか。備えあれば憂いなしってやつ?偉い、俺。
少女から逃げようとしたらそいつが「お兄さん、何処の人?」と聞いてきた。さすがにこんだけ話しかけられると逃げる気をなくすな。そういう空気じゃなくなっちゃったし。仕方なくその少女と話すことにした。



「あー、他の町から来たんだよ。旅行さ、旅行」

「ふーん」

「じゃ、俺急いでるから」

「あ、お兄さん。ちょっと」



ようやく行こうと思ったらまた話しかけてきた。何だよもう。立ち止まって「なに」と言うと、少女はあり得ないことを口にした。






「お兄さん、人間じゃないでしょ」



繰り返す輪廻の狭間で出会った僕ら



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