小説 | ナノ



「ちょ、佐久間」

「うるせえ」



ただ今佐久間はあおむけに寝転がった私の上に馬乗りになっていた。

さかのぼること30分ほど前、帝国のマネージャーである私はサッカー部員のみんなと鬼道の家に来ていた。私がお菓子でも買ってくるかーとコンビニに行こうとしたら鬼道についでに佐久間の家に寄って佐久間連れて来いと言われた。「携帯で呼び出せよ」「佐久間あいつ携帯出ないんだ。お前が直接行って連れてこい」ふざけんなやーとちゃぶ台ひっくり返したい衝動に駆られたが鬼道に何度も足蹴りを食らわせられてわかった行くよ行けばいいんだろォォォと叫んで鬼道家を飛び出し、私は佐久間の家に行った訳だが。
佐久間はインターホンに出るやいなや「入って来い」とか言いやがった。どうでもいいから早く来いと言ったが佐久間が私が入って来ないなら行かないと言って来たので仕方なく私は佐久間家の中に入るハメになった。それで佐久間の部屋に(強制的に)入ると腕を引っ張られてベッドに連行されて今に至る訳だが。



「ぎゃあァァァ変態セクハラ」

「黙ってろ」

「なにこれ何かの罰ゲーム?だったらもういいから早くネタバレしようよ」

「うるせぇっての」



するといきなり私の胸元に顔を埋めてきたもんだから「ぎゃー!」叫んで必死に佐久間の額を両手で押し返したが未だ佐久間の勢いは止まらずにいる。なに、なんなのこいつ。いつも私に馬鹿とかブスとか言ってくるくせになにやってんの。私に手を出すとかどんだけ飢えてんの佐久間ァ!



「はなっ、離せってば佐久間」

「黙れ」

「ちょ、やめっ、」



ごそごそと服を脱がせ始めた佐久間に私はようやく必死に手足を動かしたりして抵抗したけど、男と女の差ってやつなのか、佐久間を退かすことはできなかった。そうこうしてるうちに服は着々と脱がされていって、私はもう半泣きになりながら嫌だ嫌だと抵抗した。



「やだっ、やだっ、はなしっ、離してよっ…」

「……」

「離して…、何でこんなことすんのっ…」



するとぴたりと佐久間の動きが止まったので私はびっくりして思わず佐久間を見上げた。私が呆けた顔で佐久間を見上げたままでいると、いきなり佐久間が私の服を強く引っ張ってシャツを全開にしたので思わず声が出た「ひっ」。
佐久間が私の両手首を強く掴んできて、私はだんだんと恐怖をおぼえてきた。身体中が強ばる。動かなくなっていく。
もう泣きそうになって恐怖におびえていると、「お前が、」佐久間が口を開いた。



「……お前が俺の部屋に入って来るのが悪い」

「?」



一瞬佐久間がなにを言っているのかわからなかったが、すぐに私がさっき言った「何でこんなことするの」という質問に答えているとわかった。意味がわからない。なんでそんな質問に答えて、私を襲う手は止めないんだ。しかも今コイツなんてった?入って来たのが悪い?ちょっと待て。強制的に部屋に入れたの誰だと思ってんだ。
私が内心で愚痴をこぼしていると佐久間は再び胸元に顔を埋めてきた「っ、」。さっきは服越しだったけど、今回は素肌同士が直接触れあってくる。さらに佐久間は下の方に手を出して来たから「あっ」、声を出さずにはいられなかった。手足はがっちりと押さえられていて抵抗もできない。



「お前がそんな顔をするのが悪い」「っ、」

「お前がそんな厭らしいのが、悪い」



佐久間の顔が近づいて来た。ま、さか、
唇に生暖かい柔らかい感触。考える隙もなく、佐久間はあいた口の隙間に舌をねじこんできた。佐久間の舌は私の口の中で暴れ、逃げようとする私の舌を逃がすものかととらえて、絡んでくる。私はあまりに長いキスに酸欠状態になり、熱と感触に頭がぼーっとしてきた。それから少ししてから佐久間の唇は離れて言った。
ようやく自由になり、はあはあと荒く息をする私に向かって佐久間は言いはなつように言った。






「こんな綺麗で、俺に惚れられた、お前が悪い」







愛は罪を犯すもの



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