能力強化 | ナノ
起きたら気怠さが私を襲った。さすがに制服のまま寝る訳にはいかなかったので体操着を着て寝ていた。私は起き上がるのも億劫でしばらくごろごろしていた。今日は土曜日だから学校もない。私はぼーっとする頭でこれから一体どうなるんだろう、と考えていた。生活面は面倒見てやるとか言ってたけど、ほんとかどうかもわからない。ついて来なければよかったのかもしれない。でも今更戻ることなんて出来ない。そんなことを考えていると、ドアが開く音がした。そっちに視線を向けると、白い髪が視界に飛び込んできた。私が不機嫌そうに「…なに」と呟くように言うと、起きてンじゃねーか、とアクセラレータは言うと、ベッドの脇にあった机の上に何のかはわからないが一枚のカードを置いた。


「好きに使え」


そう言うと、アクセラレータは部屋を出て行った。私は机の上に置かれたカードを手に取ってみる。そして気づいた。こ、これは…!初めて見た。これはあれだ、いわゆるブラックカードとか言われるやつだ。これはあれなんじゃないか、とんでもなくすごい金持ちが使う奴なんじゃないのか。私は初めて見るブラックカードに興奮した。ていうか今好きに使えとか言ってたよねアクセラレータ。ブラックカード使えるのか。この一般人である私が。私のテンションは一気に上がった。



私はアクセラレータが出かけたのを見て、早速買い物に出かけた。ブラックカードで買い物とかむちゃくちゃわくわくする。私はひとりで一通り生活用品を買うと、荷物が邪魔だったのでちょっとご機嫌で家と店を何回か往復した。家を燃やされたのは腹立つけど、こんなふうに欲しいものを欲しいだけ買うなんて初めてだし、やっぱりアクセラレータに感謝するべきなんだろうか。ようやくすべての買い物を終えたらもう夜になっていた。私が家に帰ると、アクセラレータは帰ってきていなかった。私はもはや自室と化した寝室に入ると、大量に買った服を入れるタンスやらね家具がないのに気づいた。唯一あるのはベッドと元からついていたのであろうクローゼットだけ。中を開けたら何も入ってなかった。じゃあ一体アクセラレータはどこに服しまってるんだろうと思ったが、もうひとつ部屋があることを思い出した。入ったことはないが、多分あそこにしまっているのだろう。クローゼットの中は埃ひとつなかった。私はそこに服をしまおうとして、気づいた。埃ひとつない?アクセラレータはもうひとつの部屋に服をしまっているから、このクローゼットは使っていない。ということはこのクローゼットは長年使っていないから埃まみれになっているはずだ。なのに埃ひとつないということは。私の頭に浮かんだのは、二つの仮定。ひとつは、アクセラレータがわざわざ私のために掃除してくれたという仮定。ふたつめは、アクセラレータはこのクローゼットを使っていたけど、私に明け渡すためにわざわざ服を向こうの部屋に移動させたという仮定。でも多分、前者なのだろうと私は思った。もし後者なら、アクセラレータは私の部屋を使っていない向こうの部屋にするはずだ。わざわざ服を移動させるような面倒臭いことに手をつけるような奴じゃないし。でも掃除といっても多分、能力を使ったのだろうからそんな苦労はしなかったと思う。でもどちらにしよ私に気を遣ってしてくれたことには変わりない。あれ?アクセラレータって、そんな人間だったっけ。私が疑問に思ったその時。玄関のドアが思い切り開く音がしたと思うと、今度は私の部屋のドアが開いた。言わずもがなアクセラレータである。


「な、なに?」
「今度はちょっと俺に付き合ってもらうぜェ」


アクセラレータは私の腕を掴むと無理矢理私を立たせた。その時、嫌な予感がしたのはあながち外れてはなかった。
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