能力強化 | ナノ
私はアクセラレータに連れて行かれて家に帰り、ベッドの中にいた。帰る途中アクセラレータは始終黙っていたけど、繋いでくれた手が、とても温かく感じたのをはっきりと覚えている。私はベッドの中でぎゅっとアクセラレータが繋いでくれていた手をもう片方の手で握りしめた。アクセラレータは私をベッドに放り込むなりさっさとリビングに行ってしまった。ベッドの中で私は寂しさを感じていた。襲われたせいでもあったけど、さっきアクセラレータと手を繋いでいたから余計だった。人の温もりがなんだか恋しい。いや、人の温もりじゃないかも。これは、人とか、そういうんじゃなく、もっと個人的な。


(アクセラレータ、とか)


どきんと心臓が跳ねた気がした。思わず手を胸にやる。あれ、おかしいな。なんでいま、心臓どきんって。鼓動が、どくどくと止まらない。アクセラレータ。アクセラレータ。思うたびに心臓が跳ねた。体が熱くなった。寂しいというどんどん気持ちが膨れ上がる。おかしい。まさか、まさかまさかまさか。
するといきなり、ドアが開く音がした。びくっと心臓が跳ねる。誰かが入ってきたようだ。家にはアクセラレータしかいないから、十中八九アクセラレータだ。私が縮こまっていると、アクセラレータが近づく気配がした。どきどきしながら、なにをするのかなと思っていると、私のすぐ近くでシーツの衣擦れの音がした。近くで聞こえる音に少し驚いた。するといきなりシーツがめくれて肌寒い空気が入ってきたと思うと、同時に温もりを感じた。私がそれを何か理解する前に、手に柔らかいものがあたった。
さすがにそれを理解した。今までとは比べものにならないぐらい心臓が跳ね上がった。


(あ、アクセラレータっ?)


背中に温もりを感じる。私はアクセラレータがベッドに入り込んできたのか衝撃的で、寝ているふりしながらも心の中では大騒ぎだった。アクセラレータと一緒のベッドにいる。しかもとても近くて、背中に温もりを感じるほどに。姿は見えないけれど、すぐ近くにいる。なぜだかそれがすごく嬉しくって、嬉しくって。嬉しさで心臓が爆発しそうだ。するといきなり後ろから手が回ってきて抱きしめられた。「わっ」思わず声をあげてしまった。


「…ンだてめぇ、起きてやがったのか」
「い、いや、あの、はい」「ったくよォ…」


アクセラレータが喋るたびに私のうなじに温かい息がかかった。ぞっとしたけど、とても心地好い気がした。なんだろう、これ。嬉しいんだけど、なぜだろう。なんで、こんな。


「お前はよォ、あの時俺が来なかったらどうするつもりだったんだァ?」
「う…」
「てめェはなんの警戒もなしに夜中の道歩きやがって…お前は馬鹿ですかァ?」
「…ごめんなさい」


私を抱きしめるアクセラレータの腕にさらに力が込められる。心臓がうるさいくらいにどきどきしている。アクセラレータに聞こえるんじゃないかってくらい、どきんどきん、どきんどきん。私はなんだか我慢できなくて、口を開いた。


「あ、アクセラレータ」
「ンだよ」
「こ、これ、なに…?」


私は抱きしめているアクセラレータの腕を指差した。アクセラレータが見えるかどうかはわからないけど、伝わったようで、「あァ」と声をもらした。


「な、なんなの?」
「なんでもいいだろがよォ」
「ええっ?な、なんでっ、こっこれ」
「…俺がしたいって思ったから」


そしたらアクセラレータは私の背中に顔を埋めた。「さっさと寝ろ」ああ、きっと私の心臓の音はアクセラレータに筒抜けなんだろうなぁ、と思って、私はそっと目を閉じた。
- ナノ -