能力強化 | ナノ
無意識に手を振り払おうとしたが強く握られていて私の力では振り払えない。私が体が震え始めた時、二度目の閃光が私の視界に入った。「ぎゃあ!」下品な声をあげて反射的に私はアクセラレータに飛びついてしまった。だがアクセラレータは能力を使って軽々と閃光を跳ね返した。跳ね返った閃光は狙撃手に一直線に向かって行って、狙撃手がいたと思われるビルの屋上に直撃した。「!」どうもさっきよりも威力が何倍も強かったようで、さっきよりも大部派手な音がした。ここからは見えないが、下にいる人達はさぞかし驚いていることだろう。しかし私が気になるのはそんなことよりも―――


「や、やっつけたの…?」
「いや、まだだなァ」


アクセラレータはそういうと、きょろきょろと辺りを見回した。するとすぐに次の閃光がやってきた。アクセラレータはさっきと同じことをして舌打ちをした。私は慌てて聞いた。


「ちょ、ちょっと、なんなの?今の。どうなってんの?」
「今の見てわかンだろ。狙われてンだよ」
「そんなのわかってる!なんで狙われてんのよ!」
「俺も詳しいことは知らねェ。わかってンのは敵は複数で、空間操作係と発火能力の能力者がいるってことだけだ」


また新たな閃光が別の方向から飛んできた。アクセラレータはまた反射で避ける。どうやら敵の中にテレポーターがいるようで、アクセラレータの反射攻撃が届く前に空間移動してしまったらしい。


「まっ、待ってよ、なんであんたがそんなのに狙われてんのよっ」
「だから知らねェんだよ。あいつらはいきなりやって来たと思ったらいきなり攻撃してきたんだ、……っと」


また別の方向からの閃光。アクセラレータはまたそれを反射させて直撃させたが、多分またテレポートされて当たらなかっただろう。アクセラレータが舌打ちをした。


「…場所が特定出来なきゃ意味ねぇかァ」
「…場所?」
「場所がわかんなきゃお前がいたって意味ねぇだろォうが」
「は?私?どういうこと?」
「…お前頭いいと思ったけど案外馬鹿だなァ」
「なっ…!」
「お前を連れてきたのはあいつらを遠距離から攻撃するためだ。お前に触ってれば遠距離でも俺の攻撃が届く」


ああ、と私は納得した。どうもさっきまで私を連れてきた理由がわからなかったのだが、ようやくわかった。アクセラレータは体表面に触れなければ力を発揮出来ないが、私に触れていれば遠距離でも力を発揮できる。それを使ってアクセラレータは敵を倒そうとしているらしい。



「だけど場所がわからねェと反射もどこにやればいいかわからねェんだよなァ、これが」
「…場所?」
「場所わかんなきゃ意味ねぇだろ」
「…敵の場所、大体ならわかるよ」
「あァ!?ほんとかよ!?」
「AIM拡散力場辿れば、多分、なんとか。でも限界あるから、あんまり遠くなるとわかんなくなる」
「お前…そんな事出来ンのか」
「私の能力の原点は能力を強化することだから、AIM拡散力場も微力だけど一応能力が要因で発してるし、能力の存在を」
「ンな事はどうでもいいから早くしろ!次の攻撃が来る」


そんな事出来んのかって聞いたのはあんたじゃないか。私はむっとした。


「(聞いたのあんたじゃん)…次の攻撃が来たら跳ね返して。したらテレポートした場所を特定するから、ちゃんとやっつけてよ」
「まかせろ」



それからは少しの沈黙。一分ほどしか経っていないのだろうが、私には秒単位に感じられた。感覚を研ぎ澄ませていたからだ。次の攻撃で敵のAIM拡散力場を把握。神経を研ぎ澄ませて確実に追跡して、場所を特定する。アクセラレータにはめんどくさかったから説明はしていないが、AIM拡散力場はそこらじゅうにたくさんあるのだ。その中から敵のAIM拡散力場を特定するためには、次の攻撃で特徴などを把握しないといけないのだ。これにはかなり集中しないといけない。未来は閃光をひたすら待った。そして少しもしないうちに閃光が来た。「来たぜ!」言われなくても。未来はアクセラレータが反射する前に閃光を解析、把握した。未来は確かに敵が閃光がやって来たところに存在するのをしっかりと感じた。そして閃光はアクセラレータによって反射されていく。反射され、まっすぐ伸びていく閃光。あたる前に、把握していたAIM拡散力場が消えたのを感じたが、すぐに別の場所に現れた。未来は閉じていた目を開けると、把握したAIM拡散力場が感じるところを今度は肉眼で見た。無意識、いや反射的に口が開く。


「10時の方向、左に見える1番高いビルの上!」


アクセラレータは掴んでいる私の腕を強く握ると(痛かった)素早く私の指定した位置を把握して能力を放った。ド派手にもビルの屋上すれすれすべてを吹き飛ばして。敵は場所がばれた上に攻撃されるなんて思ってもいないだろう。多分もろにアクセラレータの攻撃を受けたはずだ。


「やったか?」
「…どうだろうね」
「お前奴らの場所わかるだろォ?どこ行った?」
「えっわかんないよ」
「はァ?」
「そんなあんな精密な作業長時間続けられる訳ないじゃん。ここらへんにはAIM拡散力場がいやってほどあるのに」
「お前役に立たねェなァ」
「はあぁあ!?あんたここは天下の学園都市だよ!?AIM拡散力場がすごい数あるのにその中からたった一種類を選んで追うのすっごい大変なんだからね!?すぐ他のと混ざっちゃうし!!だいたい役に立たないなら連れてくんな!」
「あァ!?知るかよンなもン!」
「だいたいもうとっくにテレポートしてると思うけどね!」



こればっかりはアクセラレータもなにも言えないようだった。予想外であろうと攻撃を受けたんだからテレポートするだろう普通。それからアクセラレータは家に帰ってからも機嫌が悪かった。ぜえったいあやまんないから。
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