恋揺らし | ナノ
源田くんの家にまた遊びに行くことになった。このまえとは違い、なんだか吹っ切れた気分だったから、素直に源田くんとの幸せに浸ることが出来た。だから私は上機嫌だった。スキップしながら歩きそうになったくらいだ。さすがにそれはやめたけど。源田くんの家に行く前にコンビニに寄ることにした。家にいる時に食べるお菓子とか飲み物を買って行こう。近くの行き着けのコンビニに入る。コンビニのドアが開く音と、いらっしゃいませと店員の明るい声。私がお菓子コーナーに行こうとした時、飲み物があるところで見覚えのある人を見かけた。気になって足を止めてみる。私と同じぐらいの年の子。横顔だが、あの人どこかで―――
「!」私はその人がだれか思い出した瞬間、慌てて姿を隠した。あの人は、源田くんが私と付き合う前に付き合ってた女の子だった。あの日、源田くんを要らないと泣きそうな声で言ったあの子だ。いや私が言わせてしまったのかもしれない。私は物陰からそっとあの子を見た。私には気づいてないようだった。パンコーナーでぼーっとしている。なにをしているのだろうか。考えた時だった。その子が下を向いたかと思うと、しぼり出したような辛そうな声でつぶやいたのだ。


「こうじろう…」


胸が苦しくなって、一瞬呼吸が止まった。私はばっと身を翻すと走ってコンビニを出て行った。辛い。でもあの子はもっと辛い。私は早歩きで源田くんの家に向かった。あの子から奪い取ってしまった、源田くんの家に―――
家についたら源田くんに心配された。よほど暗い顔をしていたらしい。どうしたんだ何かあったのか。しまったして聞いてくる源田くん。ねえ、源田くん、これってほんとに、私たちが感じていい幸せなのかな?あの子は泣いているなに、私たちだけ笑って過ごしていいのかな?聞けるわけがないその質問は、ただ私の心の中で渦巻いていった。
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