恋揺らし | ナノ
私にはお気に入りの場所がある。夕方に来ると調度夕日が綺麗に見える、とてもいいところだ。ただ少し遠いのが難点。帝国学園とは離れたところにある。ここを見つけたのはずっと前、雷門中に用があった私は、雷門中まで行ったところ、たまたまここを見つけたのだ。ここには大きな木の枝にタイヤがぶら下がっていて、どうも誰かが訓練用にか遊び用にかは知らないが作ったらしい。私はその近くのベンチに腰かける。正面を向くと、綺麗な夕日が見えた。だが久しぶりに見るそれも、私の心には響かなかった。…私は、なんで源田くんの傍にいるんだろう。源田くんは私を好きと言った。その言葉に私は歓喜し、源田くんの気持ちを受け止めた。だけどそのことに、裏があるのに私は気づかなかった。いや気づいてたのかもしれない。気づくのが嫌なだけで、ほんとは気づいていたのかもしれない。とにかく、源田くんの傍にいられるということ。それは、人から奪ったものだった。私と源田くんが付き合う前に源田くんの元カノさん、不動くん、そして私で一波乱起きてしまった。その時私は元カノさんから、源田くんの彼女という居場所を奪い取ったのだ。自分でも最低だと思う。しかもこの居場所を心地好く思い、呑気に源田くんと毎日を過ごしているなんてもっと最低だ。元カノさんは源田くんを想って毎日泣いているかもしれないのに私ははあとため息をついた。最低だと思うなら源田くんと別れればいいのに、私は源田くんの傍が心地好くってそれが出来ない。もう一度息を吐こうとしたら、


「あれ?高野じゃないか?」
「え?」


名前を呼ばれて振り向くと、どこか見覚えのある男の子がひとり。あれ、もしかしてこの人…


「えーと、円堂くん?」
「おう!」


にかっと太陽みたいな笑顔の彼は、円堂守くん。彼は私の友達だったりした。彼と知り合ったのは学校の行事で雷門に行った時。その時、たまたま同じ行事を任された円堂くんと知り合ったのだ。ついでに彼はFFI日本代表選手だったり。なんかFFIというのは少年サッカーの世界大会らしい。最強だ。


「どうしたんだよ?ため息なんかついて」
「うーん、ちょっと色々あって」
「色々?どうしたんだ?」
「…えーと」


円堂くんに話していいのか、私はちょっと悩んだが、彼なら源田くんとあまり接点もなさそうだし(鬼道くん繋がりで危ないかもだけど)、大丈夫かと思って、話してみた。円堂くんはあまり恋愛とかしないタイプみたいだからつまんないかなと心配していたりしたのだが、どうやらそうでもなかった。真剣に私の話を聞いてくれていた(ちょっと緊張する)。
- ナノ -