恋枯らし | ナノ
俺が未来と会う数分前。俺はザアザアと降る雨を見つめながら、未来を待っていた。未来とは二日も会ってないから、今日会うのが楽しみだ。俺はわくわくしながら雨を見つめた。今日はこの雨のせいで練習は中止になった。佐久間はぶーぶー言っていたが、俺としては未来に会えるので嬉しかったりした。佐久間にはちょっと悪いが。内心で苦笑いしていると、かたん、と後ろで物音がした。振り向くと、ピンク色の傘を持った小柄なショートヘアの少女が俺の後ろで立っていた。確か、うちのクラスの女子だ。そいつは俺と目が合うと、慌てたように言った。


「あっ、あのっ、源田くん」
「なんだ?」
「傘、ないなら、その…」


そいつは恥ずかしそうに目を背けながら、あの、その、とか呟いた。俺はどっちかっていうと未来みたいなハキハキしたさっぱりしたタイプの女が好きなのだが、そんな俺から見ても可愛いと思えるような少女だった。顔を赤くしてもじもじとするしぐさは、見てて胸がきゅんとなるようで可愛らしい。俺はくすっと笑うと、優しい口調で「どうかしたか?」と聞いた。「一緒に…入らない?」


そう言って少女は持っているピンク色の傘をおずおずと差し出してきた。これには少し驚いた。少女はクラスでは大人しい方なので、こんなことひとつ言うにも相当勇気がいっただろうに。俺がびっくりしていると、少女が「あの…」と声をかけてきた。


「あ、いや、悪いが遠慮させてもらう」
「え…?」
「彼女がもうすぐ迎えに来るんだ」


かあ、と少女の顔が赤くなった。眉が悲しそうに歪められている。真っ赤になった頬がまた可愛らしいのだが、少女は恥ずかしくてたまらないようだ。「ご、ご、ごめんなさいっ」慌てて傘を開いてあっという間に走り去ってしまった。俺は走り去っていく少女の後ろ姿を見送ると、なんか悪いことしたかな、と少し罪悪感にさいなまれた。でもまあ、未来がいるし、正しい判断だったとは思う。すると校門から大きめの傘をさした少女がやってきた。未来だ。未来は俺を見ると、ぱあっと顔を輝かせた。うん、あの子には悪いが、やっぱり正しい判断だったと思う。
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