恋枯らし | ナノ
「お前ってなんでそんなに俺にくっついてくんだよ」


食事を終えて、食器を片付けていると不動に言われた。自分ではそんなは自覚ないのだが、どうやら私は不動にくっついているらしい。あ、これ浮気とかじゃないからね源田!まあとにかく、私は不動にくっついているのだろうか。いやそう見えるのだろうか。私は自分の不動に関する行動を改めて思い出してみた。まず不動との出会いは真帝国がうんたらかんたらって時だ。あの時は正直、不動のことを殴りたくなった。というか不動が嫌いだった。あの時私は源田と喧嘩してイラついていたし、その元凶である不動を恨むのは当たり前だ。まあなんだかんだで時が流れ、不動の恨みもすっかり消えた時、不動に再会したのだ。ぶっちゃけ不動のことを半分忘れてた私は鬼道に言われるまで気づかなかった。それで日本代表に不動が選ばれて、それからだ。日本代表のマネージャーになって、不動の足治してって、それぐらいだ。別にくっついているとは言わないと思う。


「私そんなに不動にくっついてる?」
「うざいくらいにな」
「そんなにくっついてないでしょ。ていうか私のどの辺が不動にくっついてるの」
「全部」
「はあ?意味わかんないんだけど。具体的に言ってよ」
「ああ?めんどくせぇな」
「もしかして足のこととか?」
「それもある」
「なにそれ。マネージャーとしての仕事しただけじゃん」
「やり過ぎなんだよバーカ」
「はああああ?」


意味がわからなくてぐっと眉間にシワを寄せた。なんだよバーカって。バカっていう方がバカなんだぞ不動のバカ。不動は珍しくイラついた様子で食器をガチャガチャと片付けると、舌打ちをした。舌打ちをされるようなことしたのだろうか。ていうか、今日の不動ちょっとおかしくないか。イライラしてるし練習でミスってたしなんか変なこと言ってるし。やっぱりちょっとおかしい気がする。私は食堂を出る不動を小走りで追いかけると、腕を掴んだ。


「ねえ不動、ちょっとおかしく――――」
「うるせえっ!!」


食堂中に響き渡るくらい大きい声で不動が怒鳴った。ざわついていたみんながぴたりと会話を止めて私たちを見てくる。みんなの視線が痛かったが、それよりも私は不動が怒鳴ったことがびっくりで、不動に払われた手が痛くて、あまり気にならなかった。不動は自分の行動に自分でも驚いているらしく、私の手を払った手が行き場がないみたく宙に浮いている。どうしてだろう。ついこの前まで仲良く喋れていたのに、ありがとうと言ってくれたのに、どうしてこんな風になったのだろう。ピシ、と私と不動の間に、亀裂が入る音がした気がした。
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