ss | ナノ





「ねえ、邪魔じゃないの?」
「は…?いっ、ひっぱるな!」

掴んでいた手を緩めると、その銀髪はさらりと宙を舞った。翼の髪はすごく長い。長くてキレイ。だから僕は、その髪がふわふわと揺れ動くのを観るのが好きだった。プールで泳ごうと言い出した正宗とギンギンに連れられて、更衣室へ向かった僕と翼。二人はさっさと着替えて先に行ってしまったし、今ここには僕と翼しかいない。翼はあまり自分の容姿や他人とのスキンシップに関心がないのか、触れられることに対しては抵抗がないらしい。普段から髪を触られることには何も言ってこないし、前から後ろからと抱きついてみたり手を握ったりしてみても反応は薄い。正直ちょっとつまらないけれど、場合によっては好都合かもしれないと思った。たとえば今みたいに。

「邪魔だと思うから結ぼうとしてるんじゃないか。こう長いと周りにも迷惑だからな…三つ編みにでもすれば大丈夫だろう」
「ふーん」
「…行かないのか?」
「うーん…結んであげよっか」
「は?」
「だって何か苦戦してるみたいに見えるんだもん」
「……まあ、多少」

翼はいつも金色の髪留めでその長い髪を束ねている。今はその髪留めも無い状態だ。だからいつも以上に、髪が大きく揺れる。今度は優しく、そっとその銀髪に触れた。いつだったか好奇心で触ってみたおもちゃ売り場の人形の髪の毛はもっとゴワゴワしていたけれど、翼の髪はサラリとしていて気持ちいい。

「…少し不安なんだが」
「何言ってんのさ、僕って結構器用なんだよ?」

本当は靡くこの銀髪をもっと見ていたかったから、結ってしまうのは嫌だった。でもこうしなければいつまで経っても翼と遊べない。手で数回髪を梳いて、真ん中の辺りから三つに分けて結っていく。黙って大人しく座っている翼が何だか面白くって楽しくなった。柔らかい香りが鼻を掠める。最後まで結い終えたところで、たまらずその背に抱きついた。

「はい完成〜」
「ありがとう。…遊、重いんだが」
「いーじゃん!お礼ってことでさ、ちょっとだけ!」
「…仕方ないな」

きっと、翼にとって天童遊という存在は、まだまだ弟のようなものなのだ。所謂、おんぶをされている今だって、仕方なく、我が儘を聞いてくれているだけ。それでも、こんな風に翼の近くにいることが出来るのが僕だけなのも間違いない事実だ。この我が儘が通じなくなったそのとき、翼の中で僕の存在が、少しでも大きくなっていればいい。そう願って、翼には気づかれないよう、目の前の銀色にそっとキスをした。

恋結び / 20111122

小学生がこんなマセてるわけないけどな!遊くん可愛い過ぎてつらい!



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -