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「なぁ、丸井」
「んー?」
「ひなのこと好きか?」
「は?」
「俺は好き」
「えっ…は、え?」
「好きか?」
「…うん」
「じゃあ、勝負やね」


一体全体どうしてこうなったのか、俺にはわからなかった。俺と仁王とひなは同じクラスで、仁王は胡散臭いけど悪い奴ではなかったし、確かに俺はひなのことが気になっていた。でも今までずっと何だかんだ三人で過ごしてきたし、これからもずっとそうであればいいと思っていた。なのに、どこで拗れたのか。

そもそも、仁王は一体いつからひなのことを好きになった?以前テニス部で赤也からふっかけられたら恋バナには全く反応していなかった。今でもしっかり記憶に残っている、モテるのに、意外だなって。

ひなが仁王の気持ちを知ったら、きっと俺と同じようにもやもやわからなくなるに違いない。それくらい意外な言葉だった。仁王が誰かを、好き、だなんて。ひなは仁王のこと、どう思ってるんだろう。好きなのかな。仮にそうだったとしたら、俺は失恋したことになるのだろうか。あの仁王に勝てるとは思えない。アイツの方が何倍も女の子と上手につき合えるし、恋の駆け引きなんてものもお手のものだろう。そんな仁王に、俺が勝てるはず無いじゃないか。


「勝負…」


思わず口に出していた。いつの間にかもう夜で、帰り際に仁王から言われたその言葉を布団の中で悶々と繰り返し、真意を考える。想像しただけでゾッとした。ひなと仁王が、もしつき合うようになったら。そしたら、俺は?俺はいったいどうすれば良いのだろう。今まで通りで良いとひなは言ってくれるかもしれない、今まで通り三人で仲良くしたいと。でもきっと仁王は違う。宣戦布告までしてきたんだ、そこには相当な思いがあるはず。せっかく結ばれたというのに俺が間に入るなんて、とんだ障害物だ。良い顔はしない、するはずもない。三人一緒に過ごすことは、出来なくなる。それなら、そうなったとしたら、俺は、好きな子と友達、二人を同時に失うのか。


「嫌だ…そんなの…」


いったいどうしたらいい?大人しく身を引いて独りぼっちになるのは嫌だ。本当に仁王と勝負するしかないのか。俺だってそれなりに女子にはモテる。告白されたことも告白したことも、付き合ったことだってある。けれど、勝負だなんて言ったところで一体何を競えば良いのか。わからない、わからなかった。




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