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「ねえ白竜、僕たちはどこから間違えたんだろうか」
「…最初からだ」

背中合わせのまま二人で座り込んで、どれくらいこうしていたかはわからない。背中越しの彼が言う、最初が、果たして天馬たちがこの島に着たときのことを指すのか、彼自身がこの島に来たときのことを指すのかもわからない。けれどきっと、僕は、僕の過ちは、サッカーと妹を裏切ったあのときから始まったのだろう。自信も勇気もなかったあのときの僕こそが、最大の罪なのだから。

妹は言った、僕のサッカーが好きだと。天馬は言った、僕とのサッカーが好きだと。そして僕は、サッカーを憎み、サッカーに救われた。妹の死は僕にとって、強さを求め始めたきっかけだった。天馬との出逢いは僕にとって、呪縛からの救済、そして、彼らとの、別れを指していた。実際僕自身、何故こうして存在しているのかわからなかった。考えて考えて、それでもよくわからなかった。けれど、彼や天馬たちと心からぶつかり合ってサッカーをした、それだけで何だか、軽くなったのだ。だからきっと僕は、サッカーを、愛するために、ここにいるんじゃないかって。それが僕の結論だ。

「シュウ、」
「うん?」
「今、何を考えている?」
「特に…何も?」
「嘘をつくな」

いってしまうんだろう?
白竜と言う男は、だいたいのことにはとても鈍いが、時折不意に核心を突いてくる。いつから気づいていたのか、どうやら僕が、昔昔の人間であることを理解しているらしい。まったく油断ならない奴だ。このこと、白竜にだけは知られたくなかったのにな。

「黙っていないで何か言え」
「…ごめん」
「謝罪される覚えはないぞ」
「うん、でも、ごめんね」

何も言わずに別れられれば良いと思っていた。生きている白竜と、死んでいる僕では、どうあっても共にゆくことは出来ない。それならいっそ、さらりと風のように消え去ろうと。未練がないと言えば嘘だった。単純に、若者らしく色々な経験をしてみたいというのも理由のひとつだし、天馬の成長をもっと見ていたいというのもある。そして何より、彼の、白竜の傍にいたいと願っていた。彼は面白い。自分とは何もかもが違うのに、何となく考えることはわかってしまうし、恐ろしいほどに強さに固執するかと思えば小さな子供のような目をすることもある。そして、素性のあやふやな僕を受け入れ、共に強さを求め、肩を並べて闘ってくれたのは、他でもない白竜なのだ。

一種の恋慕のような、憧憬のような、複雑だが確かな思いがここにはあった。

「俺は、お前と共に戦えて嬉しかった」
「うん」
「だから、謝るな」
「うん…うん、ごめんね」
「だから!」
「ごめんね、白竜…ありがとう」

騙すように人間のフリをした僕を許してほしい。何も言わず消えようとした僕を許してほしい。サッカーに向き合えなかった、以前の僕を許してほしい。君から離れていく、僕のことを許してほしい。

ありがとうと、きっと彼もそう言ってくれた。シュウと、名前を呼んでくれた。ねえ白竜。それだけで僕は、とても幸せなんだ。最期に見えた君の涙が、とてもあたたかかった。

私の愛情は生きている / 20120417

無駄に長い。



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