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苦しい。

ぎゅうっと痛いくらい抱きしめられて首が折れそう。苦しいと伝えてもその力は緩むどころか強くなるばかりで眩暈がする。どうしたものかとため息をつくとごめんと小さく声がした。謝るくらいならこの腕緩めてくれないかな何て思うだけ思ってみたけれど、たぶん彼にとって何かしら嫌な出来事が起こったのだろうと察しがついていた私はあえてそれを言わない。

ああ苦しい。
そしてもどかしい。

こうやって抱きしめられるといつも思う。彼の心音が私の耳に届くように彼の心の悲鳴や叫びも私の心へ届けばいいのに。私のこのもどかしさや苦しさも全部全部彼の心に届いたら、彼は私に何の気兼ねもなく全てを傾けてくれるようになるのかしら。そうなることはあり得ないのだけれど、そうなったらいいと思う。

ねえ、貴方にとっての私って何なの?貴方の心の傷を癒やすのは、私の役目じゃないの?私のことを思うなら私をもっと頼ってよ、私にもっと縋ってよ。そう言いたくても言え出せないのは、きっと言っても彼を困らせる結果にしか繋がらないだろうと予想がつくから。

何かあったのなら抱きしめて堪えるんじゃなくてすべて吐き出してくれればいいのに。彼はいっつもこうだ。何かある度に私を抱きしめるか、何でもないよって力無く笑うか、そのどちらか。きっと彼なりに私に心配かけまいとしてくれてるんだろうけど、こっちからしてみればその優しさがひどく心に刺さって痛い。私は彼にとっての鎮痛剤でしかなくて、支えにはなれていないのではないかと不安で仕方がなくなる。でもこのことを彼に打ち明けてしまえば彼はまた、ごめんって困ったように笑うんだろうな。

不器用なぼくら / 20091213


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テーマ「人外ファンタジー」
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