log | ナノ




暑い暑い暑い暑い暑い、別に太陽が嫌いなわけではない、オーストラリアは大好きだ、だけど、今だけは全力で寒い国に行きたい。そんな体が溶けるんじゃないかと思うくらい暑い気候の中、いつものオレならクーラーが聞いた部屋で雑誌を読むか、海なりプールなり行くところだが、なぜこんな状態になっているかと言うと、ジーンが楽しそうにパンを焼いているのが原因だ。クーラーをつけたりして外気の温度が変化するとパンはうまく膨らまなくなるとかで、当然冷房を入れてはもらえない。ここはジーンの家のパン屋さんの厨房なので、もちろん扇風機なんてものもないのだ。

「まだ?」
「今から焼くとこだ」

ひよこのエプロンに鍋つかみみたいな手袋をした我がチームのゴールキーパーは楽しそうに爽やかな笑顔を向けた。腹が減ったから何か食べたいと言い出したのはオレだけど、こんなことなら多少暑くても外に出てニースたちと海に行けば良かった、そうすれば冷たいかき氷なり冷えたジュースなり補給することもできたし、海の水にでも浸かれば暑さからは解放されただろうのに。小さくため息をついていると、ジーンが柔らかく笑いながら近づいてきて、オレの目の前にイチゴ味のアイスを差し出した。

「食べるか?」

そう言うジーンの手の中には、同じ種類のチョコ味のアイスがおさまっている。ぽかんとしていたオレは我に返って一応お礼を言いながらイチゴアイスを受け取った。オレはイチゴ味が好きだ、イチゴの甘酸っぱさはもちろん、赤と白を混ぜ合わせたピンクと言う色合いはその味にマッチしていて視覚的にも美味しさを倍増させる、最高だ。そして、きっとジーンはその事を知っていたからオレにこのアイスをくれたんだろう。ジーンだって、イチゴ好きなくせに。そんな優しさがくすぐったくて照れくさくて、何だかジーンには適わないような気がした。照れ隠しとも負け惜しみともつかないような感情につき動かされて、オレはジーンの手をつかんだ。その手に持っていたスプーンの上のチョコアイスを自身の口に入れる。きょとんとしていたジーンは可笑しそうに笑った。

「なんだ、イチゴよりチョコがよかったのか」

ほえほえと笑うジーンは手元のチョコアイスをもう一度掬って、あーん、とか言いながらオレに差し出してくる。食えってか、つーかお前間接キスなんだからもっと照れろよ。そんな葛藤を脳内で繰り広げていたオレはさぞかし膨れっ面をしていたことだろう。オレの葛藤など気にもとめていないのか、もしくはただ気づいていないだけなのか知らないけど、ジーンは笑顔のままチョコを差し出し続ける。されるがままにパクッとそのチョコをスプーンごと口に入れると、ちょうどパンが焼けたようでタイマーの音が聞こえた。厨房に消えたジーンを見送ってから、自分の手元のイチゴアイスを食べた。チョコとイチゴが混ざり合って、何だか変な味がした。


太陽が笑う / 20100626

ベイカーさんはパン屋さんで天然さん。リーフくんは素直になれない。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -